本年度は乾隆画壇の東アジア史的展開について、引き続き基礎的な調査および研究を行った。調査活動としては、2015年秋に、北京・故宮博物院で行われた「石渠宝笈特展」、「普天同慶―清代万寿盛典展」を参観し、清代の宮廷文物のコレクション活動についての最新の研究成果を学ぶことができた。そのほか、上海博物館「呉湖帆書画鑑蔵特展」、南京博物院「秣陵烟月:明末清初金陵絵画特展」、浙江省博物館「中興紀勝―南宋風物観止展」を参観し、大きな知見を得た。 また研究活動としては、第67回美術史学会全国大会シンポジウムにおいて、中国の宮廷美術の意義についての総括的な報告をおこない、また徐揚「御製生春詩図」について、それが設置された重華宮という場から絵画表現の意味を考察する研究発表をおこなった。その後、武田科学振興財団杏雨書屋所蔵の『本草品彙精要』について、明代宮廷画院の絵画技術という側面からの講演を行った。また、シアトルで行われたAAS大会でのパネル、Copying and the Circulating Image in Early Modern East Asia、におけるディスカッサントで、中国と日本の模写制作活動の共通性と差異について議論することができた。これらの研究成果は、次年度以降に論文化される予定である。
|