今年度の作品の調査活動としては、中国での美術館を中心に行い、最近の中国の個人コレクター所蔵の宋元画を集めた「敏行与迪哲」展(龍美術館)、日本とも関係の深い陳師曽の個展である「 生誕140周年 陳師曽展」(中国美術館)、モンゴル帝国の遺物を集めた「大元三都展」(首都博物館)、初公開を含む館蔵の明清画を集めた「明中期呉門書画特展」「晩明絵画作品展」(天津博物館)、戦前の個人コレクションをはじめて系統的に展示した「弘一斎書画精品展」(上海博物館)、「煙雲四合ー清代蘇州顧氏的収蔵」(蘇州博物館)、元時代のコレクションついての研究成果である「公主的雅集」(台北・国立故宮博物院)、何創時書法基金会「董其昌展」などの展覧会を参観し、宋時代から元時代における宮廷コレクションの変化や、清時代の宮廷絵画制作について、大きな知見を得た。また、メトロポリタン美術館において、日本に旧蔵された中国絵画作品六件の調査を行い、箱書きなど伝来を調査することによって、江戸時代の中国絵画の流通状況について、具体的な情報を得ることができた。 また、今年度の研究活動としては、東アジアの境界領域における作品評価の意味を考察した「境界と国籍-“美術”作品をめぐる社会との対話―」(9月29日)、南宋における宮廷コレクションの表具の意味を考察した「南宋宮廷における北宋宮廷コレクションの記憶―北宋宮廷文物と表具の再評価をめぐって―」(8月1日)、藍瑛工房の存在とその活動について具体的な作品から考察した「明末杭州の画家・ 藍瑛-その家族と工房の経営戦略-」(10月15日)などの口頭発表を行い、研究活動の一端を公にすることができた。
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