最終年度にあたる本年は乾隆画壇の東アジア史的展開についての調査および研究を行うとともに、周辺諸国に関する包括的な研究をおこなった。調査活動としては、2017年秋に台北・國立故宮博物院で行われた「行篋隨行─乾隆帝南巡と行李の中の書画」展、同年11月の「国宝の形成」展、「ブランドの物語─乾隆帝の文物コレクションと包装の美」展、2018年3月の「宋代花箋展」、また、2018年2月には鹿児島、山口、佐賀等で、関連する作品の調査を行うことができた。 また、茶の湯の観点から江戸時代初期における中国絵画、とくに牧谿コレクションの形成とその特殊な意味の生成について論じた「「牧谿」誕生」(「特別展 茶の湯 記念シンポジウム 茶の湯を語る―ヒトから、モノから」東京国立博物館)、近代の中国書画コレクションに連続するものとしての、江戸時代における中国絵画コレクションの特色と清朝宮廷コレクションの比較を行った「近代中国学への架け橋 ―江戸時代の中国絵画コレクション―」(「第11回 SGRAチャイナフォーラム 東アジアかたみた中国美術史学」北京師範大学)、南宋における仏教文物の流通の問題を扱った「南宋宮廷コレクションと仏教世界の再生―士大夫社会の変容―」(「メネストレル主催 国際シンポジウム 中世における文化交流―対話から文化の生成へ―」大和文華館)、「日本入宋僧俊與圓爾:佛教文物與南宋社會」(『兩宋書畫傳習與研究國際學術論壇』中國美術学院)などの研究発表を行い、国内外の研究者と意見を交換することができた。
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