研究課題/領域番号 |
26770064
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
亀田 真澄 東京大学, 人文社会系研究科, 助教 (70726679)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プロパガンダ / 宇宙開発史 / ソ連文化史 |
研究実績の概要 |
本研究はソ連における宇宙開発のテレビプロパガンダに焦点を当て、主にアメリカの事例との比較を踏まえつつ、その特徴を検討するものである。2015年度は特に、これまで研究の進んでこなかった宇宙テレビ開発史に焦点を当てるべく、サンクト・ペテルブルクのロシア国立科学研究所テレビ部門のアーカイヴを訪問した。 本年度の研究によってわかったことは、ソ連のテレビ・プロパガンダ一般において、1920年代の映画理論からの影響が強かったこと、また録画技術・物資の欠乏とも関連して、テレビで「生中継」をするということの価値が、他の国に比べてかなり高かったということである。また、フルシチョフ期の「英雄」は、スターリン期の英雄表象とは大きく異なり、親しみやすい人間的な人物として表象されることが多かったが、宇宙飛行士のテレビ・プロパガンダにおいても、あえて「小さな失敗」をしているところを放映するなど、完ぺきではない側面を呈示していたことが明らかになった。ただし、「大きな失敗」については国家機密として扱われており、その全貌はいまだに明らかにされてはいない。今回のサンクト・ペテルブルクでのアーカイヴ調査でわかったことの一つに、アーカイヴのほとんどの文書はいまだ非公開であり、その全容は研究所のスタッフですら知らされていないという状況であった。 本年度の研究成果としては、国際学会で3本の研究発表を行い、日本語論文1本を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科研費を利用することで、サンクトペテルブルクの科学研究所におけるアーカイヴ調査が可能であり、研究所副局長のツィツーリン氏とも研究協力体制を築くことができたという点で、研究は大きく進展した。 ただし、現地でのアーカイヴ調査でわかったことのひとつに、宇宙テレビ開発に関するアーカイヴ資料には、いまだに公開されていないものが大多数を占めているということがあった。その意味で、当初予定していたほどにはアーカイヴ調査は進まなかったし、またアーカイヴに大幅に依拠する研究自体が難しいということがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究においては、アメリカにおける宇宙開発のプロパガンダとの比較の観点に重点を置いていきたい。特に、1930年代にさかんであった「未来展示型」のプロパガンダ(近い未来においては、不足しているものが手に入るようになり、理想的な生活を送ることができるとする宣伝手法)が、1960年代には核戦争への不安を背景として再燃していたため、そのことと有人宇宙飛行プロパガンダとの関連についても検討していきたい。
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