最終年度に当たる本年の成果は以下の通りである。 (1)本研究課題にもとづく論文「初期日本映画における外国映画のリメイク:『憲兵モエビウス』から『大尉の娘』へ」北村匡平・志村三代子編『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年12月)を刊行した。時代や国境を越えて再創造される映画のダイナミズムをひもといたリメイク映画論である本書において、日本映画における最初のリメイク映画をとりあげ、映画および演劇における再生産の過程を比較文化史的に論じた。 (2)人文研アカデミー2017 連続レクチャー上映会「ロシア革命百周年記念映画祭―映像に刻まれたロシア革命―」にて、「革命前後のロシア映画、ロシア・ソ連映画の日本受容:京大人文研所蔵山本明資料の紹介」と題した報告を行った(2017年11月)。報告前半は、本研究課題に即した以下の内容である。映画は原作の文学とどのような関係をつむいできたのか、革命勃発によりその関係はどう変化したのか、文芸映画を中心にロシア・ソ連映画史の過程を報告したものである。 (3)その他に、本研究課題に関連する成果として、シンポジウム「日本映画の現在/日本映画研究の現在:国際的な視座から」(東北大学大学院国際文化研究科)において、「映画史と映画上映史の交差:海外における戦前の日本映画受容をめぐって」と題した講演を行った(2018年3月)。内容は、戦前の日本映画の海外における受容、戦後の日本映画の海外進出、フィルム・アーカイヴと復元映画祭の歴史について、映画史と映画上映史とが生産的に交差する場としての機能に注目したものである。
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