本研究では、第一に、1910 年代の無声映画期における主要な映画産業国を対象に、古典的ハリウッド映画形式の確立へと至る従来の進歩史観に従うのではなく、インターナショナルな映画形式とナショナルな映画形式の対峙の様相を比較映画史として記述することを目指した。 第二に、演劇・美術・音楽・舞踊・文学といった隣接する諸芸術と映画界の多様な連関が開花していった1910 年代において、大衆芸術としての映画の形成プロセスを分析し、映画言語の固有性および映画作品の作家性をめぐる新たなアプローチを実践した。 その成果は、研究書『映画の胎動ー1910年代の比較映画史』として人文書院より上梓した。
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