研究課題/領域番号 |
26770080
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
速水 香織 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60556653)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 出版文化 / 浮世草子 / 江戸本屋仲間 |
研究実績の概要 |
貞享・元禄期を含む時期に、江戸において出版活動に従事していた書肆の活動調査を継続して行った。そのうち、西鶴没後の元禄10年代に関して、江戸書肆万屋清兵衛の活動について上方出版界との係わりを中心に考察した。同書肆は元禄10年頃から比較的大部な漢籍の和刻本を、概ね単独で出版する事例を増加させており、そのひとつである『孟子』を八文字屋と連名で出版しているが、報告者の調査から、これは万屋清兵衛が主導的に出版を計画した可能性が高いと結論づけた。さらに、同時期の江戸出版界は、取引先となる上方書肆に対し、特定の者に特定の江戸書肆が取引を行う、すなわち競合するというより、いわば棲み分けの状態にあったらしいことを指摘した。 さらに、同時期は江戸地店が互いに密接な関係を構築してゆく時期でもあるが、この時期に培われた関係性が1700年代後半にまで影響を及ぼしていたことを示す一事例として、1750年代に三都において相次いで刊行された中山道関連書籍(道中記等)について、その刊行状況と内容の相互関連性を明らかにした。同時期刊行の関連書籍は、その先駆けとなる『木曽路之記』(宝永6年京都小川多左衛門板)、さらに同書の数年後に刊行された『木曽懐宝道中鑑』(正徳頃江戸須原屋平右衛門板)から多量の情報が摂取されていること、ただし『木曽路之記』『懐宝道中鑑』両書には記述の重複がほぼ存在しないことを突き止めた。その上で、この内容上の関係は、当時板元が置かれていた社会的状況を反映している可能性が高いことを指摘した。なお、上記の成果は、学会における口頭発表により公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1600年代から1700年代前半にかけての江戸出版界において大規模な活動を展開していた書肆の活動調査に時間を要しているため、浮世草子・俳諧作者との関係についての考察に後れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかにした貞享・元禄期における出版書肆の活動内容を踏まえ、これらにより世に出された出版物・特に江戸板浮世草子の文化史的位置づけを明らかにすべく内容分析を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度における資料調査・図書購入等について、当初の予定より安価であったことにより余剰が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究計画に則り、平成28年度請求額と合せ必要と判断した調査費用ならびに図書購入等の費用とする。
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