研究課題/領域番号 |
26770082
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研究機関 | 熊本県立大学 |
研究代表者 |
大島 明秀 熊本県立大学, 文学部, 准教授 (50508786)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 和本 / 和漢籍 / 熊本 / 肥後 / 菊池 / 美里町 / 菊鹿 / 蔵書印 |
研究実績の概要 |
菊池市立図書館の工事により、図書館が新設されるまでの貴重図書の保管体制が不透明になったことから、本年度は菊池市中央公民館(旧図書室)蔵和漢籍の調査を重点的に行うことが賢明と判断し、これを実行した。当初予定して1,000冊に加え、途中、別機関から同じ旧図書室旧蔵系統と目される200冊の和本を新たに発見したことから、計1,200冊の調査に当たることとした。結果、無秩序な状態にあった1,200冊の和漢籍は259点にまとめることができ、その概要を『菊池市中央公民館蔵和漢籍目録 第一稿』として刊行した。これにより蔵書構成の全体像が把握できるようになった。また、古典籍群の中に菊鹿の僧侶・原口針水のものと目される蔵書印を発見したことから、この人物に着目し、追究を開始した。その理由は、幕末近代移行期に活躍した人物であることと、針水が住職をつとめた菊鹿・光照寺は浄土真宗西本願寺派の寺院であり、恵照寺と何らかの繋がりを見出せる可能性を秘めているからである。なお、原口針水を追究した成果は、平成26年度熊本県立大学文学部フォーラム「それでも天は転る―熊本におけるもう一つの近代―」において、「菊鹿の僧侶・原口針水の近代」という演題で口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね申請時の研究計画に従って資料収集、分析、成果の公開を進めるようつとめてきた。中でも、研究課題の一つの柱である菊池市中央公民館蔵和漢籍について、早々に簡易目録『菊池市中央公民館蔵和漢籍目録 第一稿』を刊行できたことは、蔵書構成の全体像を把握する上でも大きな達成となった。また、有望な研究課題として新たに原口針水を発掘し、口頭発表まで果たしたことは大きな展開であった。全体的に、資料収集、分析、成果の公開ともに順調に行えている。一方で、恵照寺蔵書については、予備調査段階に留まっており、次年度には本格的に着手する意向である。
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今後の研究の推進方策 |
「菊池市中央公民館蔵書」「恵照寺蔵書」といった本研究の柱になるテーマについては、今後も継続して関連資料の収集、分析を行い、成果の公開につとめる。また、原口針水のような有望な研究課題も積極的に発掘し、研究対象時期における地域のネットワークや流通体制まで視野に入れて蔵書の位置付けを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書館の新設工事により貴重書の保管体制が不透明となったことから、菊池市中央公民館蔵和漢籍の調査を重点的に行うことが賢明と判断し、これを実行したことで、それに伴って恵照寺調査や関連資料収集が手薄となり、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
恵照寺調査関連で実行できなかった分が翌年度繰越金となった。この分も含めて、バランスよく菊池市中央公民館と恵照寺の資料調査を計画的に実施したい。これ以外については、前年度に引き続き研究関連書籍の購入や複写、資料調査などを行い、適切に研究費を使用していきたいと考えている。
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