橋本経亮(1759~1805)は、非蔵人として朝廷に仕える傍ら京の梅宮社正禰宜を務め、一方で有職故実に秀でた和学者として世に知られた、近世中後期の京都を代表する知識人のひとりである。慶應義塾図書館所蔵『香果遺珍』は彼が書写・蒐集した、約1,200点にも及ぶ旧蔵資料群である。本研究では、これまで未整理であったために研究者の利用が困難であった『香果遺珍』の悉皆調査を行い、それとともに経亮とその周辺による学問・文芸上の活動を総合的に検証することを通じて、近世人が〈和学〉という形で自国の文物へと向けていた関心の多様なありようを、近世という時代に即して実証的に把握することを試みた。
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