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2016 年度 実施状況報告書

佐藤春夫旧蔵資料による文壇ネットワークの解析

研究課題

研究課題/領域番号 26770086
研究機関実践女子大学

研究代表者

河野 龍也  実践女子大学, 文学部, 准教授 (20511827)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2018-03-31
キーワード国文学 / 近代文学 / 台湾 / 中国 / 植民地 / 旅行記 / 草稿研究 / 国際情報交換
研究実績の概要

2016年度は、台湾の中央研究院中国文哲研究所にて訪問研究を行った。この機会を活用し、佐藤春夫の台湾・福建旅行記に登場する場所の調査と、関係者子孫への取材を網羅的に行うことで、本研究の柱の一つである佐藤春夫の国際交流(大陸・外地)の状況を把握することができた。
具体的には、福建省厦門で、歴史家洪卜仁氏および、黄禎良(『南方紀行』に登場)の親族と面会、また台湾では『南方紀行』の林正熊・徐朝帆、「殖民地の旅」の林資彬・呂如濤・許媽葵・鄭貽林、「女誡扇綺譚」の船問屋と酒楼経営者、「鷹爪花」の鳳山斎堂主それぞれの子孫を訪問。春夫が台湾・福建で接触した人脈のネットワークを家族の証言から明らかにし、情報源としての彼らが、春夫の旅行記の成立にどう関与したかを追究した。
一方、旅行記や創作の舞台を確定するため、今回、地政事務所所管の土地資料を活用する新しい方法を試み、大きな成果を得た。例えば「女誡扇綺譚」の船問屋について、土地文書と古地図、子孫の証言を総合し、春夫が訪ねた1920年当時の建物の状況を再現することに成功した。また作中の酒楼「酔仙閣」の一部が現存することも、この手法により発見することができた。これらは地元(台南)でも伝承が途絶えていた事実であり、建物の文化財としての保全や文化交流の上でも重要な発見であったと考える。国立台湾文学館に保全と周知活動を申し入れてきた。
以上の研究成果の一部は、すでに3本の日本語論文として公表した。うち1本は2017年中に台湾で中国語訳が出版される予定である。また、国立台湾文学館、厦門大学での国際シンポジウム、日本台湾学会台北支部会で関連するテーマを日本語で報告したほか、邱若山氏による春夫の台湾関連作品の中国語訳出版を記念する座談会と、中央研究院における研究報告会では中国語で報告を行い、研究手法と成果を現地に直接発信する試みを積極的に行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

資料公開の交渉を含む本研究では、進捗状況を確実にするため、3つのテーマを柱にして取り組んでいる。それぞれについて状況を記載する。

A(春夫あて諸家書簡の翻刻と解説):1956年に青森蟹田に太宰治文学碑を建立するにあたり、中村貞次郎ら地元有志の熱意に動かされた井伏鱒二が春夫に揮毫を依頼した経緯が分かる書簡が佐藤家資料に含まれていることが分かった。『東奥日報』および共同通信の取材に協力し、各新聞に大きく報道された。また、佐藤春夫記念館で開催された谷中安規展に資料提供の協力を行った。
B(草稿類の整理と分析):在外研究に従事したため、草稿実物の調査は据え置きとなり、撮影済の画像を整理するにとどまった。
C(台湾・中国紀行の詳註作成):厦門および台湾各地で紀行文に登場する春夫関係者につき、ほぼすべての人物に関して文献調査が終了した。また子孫への取材から、古写真を中心とする一次資料を数多く提供してもらうことができた。

今後の研究の推進方策

今後も、当初計画の3本の柱を維持して研究を進めて行く。

A(春夫あて諸家書簡の翻刻と解説):発信者別に資料整理を進め、佐藤春夫記念館と協力しながら、公表の許諾取得と公表時期の調整を図っていく。
B(草稿類の整理と分析):草稿資料の撮影を再開する。重要度の高い大正期の資料に関しては、リストを整備し、原稿やインクの種類から成立の時期を推定する作業に入る。
C(台湾・中国紀行の詳註作成):現地調査と関係者への取材によって収集した資料をもとに、2020年の春夫訪台100年に向けて、研究成果の日中両語による出版準備に着手する。

備考

台湾・福建地域におけるフィールドワークで、それぞれの研究機関に所属する研究者に情報提供し、また共同調査を行った。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] 国立台湾文学館/輔仁大学/台湾大学(台湾)

    • 国名
      その他の国・地域
    • 外国機関名
      国立台湾文学館/輔仁大学/台湾大学
  • [国際共同研究] 厦門大学(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      厦門大学
  • [雑誌論文] 佐藤春夫『南方紀行』の中国近代(四):筆談が生んだ「誤解」2017

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 雑誌名

      実践国文学

      巻: 第91号 ページ: 54-71

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 「女誡扇綺譚」の廃屋:台南土地資料からの再検討2017

    • 著者名/発表者名
      河野龍也・蔡維鋼
    • 雑誌名

      成蹊国文

      巻: 第50号 ページ: 11-26

    • オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 言語体験としての旅:佐藤春夫の「台湾もの」における「越境」2016

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 雑誌名

      跨境:日本語文学研究

      巻: 第3号 ページ: 83-95

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 佐藤春夫の台湾滞在に関する新事実(二):土地資料を活用した台南関連遺跡の調査2016

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 雑誌名

      実践国文学

      巻: 第90号 ページ: 24-44

    • オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 台灣1920年、殖民地之旅:被人遺忘的佐藤春夫的足跡2017

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 学会等名
      中央研究院学術座談会
    • 発表場所
      中央研究院中国文哲研究所
    • 年月日
      2017-03-16 – 2017-03-16
    • 国際学会
  • [学会発表] 台湾における佐藤春夫:その人脈と訪問先の現在2017

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 学会等名
      日本台湾学会台北定例研究会
    • 発表場所
      国立台湾大学台湾文学研究所
    • 年月日
      2017-03-11 – 2017-03-11
    • 国際学会
  • [学会発表] 佐藤春夫が描いた厦門:体験の現場と創作の風景をめぐって2016

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 学会等名
      「東アジア内部の自他認識」国際学術シンポジウム
    • 発表場所
      厦門大学外文学院
    • 年月日
      2016-06-24 – 2016-06-26
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 佐藤春夫の台湾紀行を支えた人脈:知られざる伏線・東其石2016

    • 著者名/発表者名
      河野龍也
    • 学会等名
      台日〈文学と歌謡〉国際学術シンポジウム
    • 発表場所
      国立台湾文学館
    • 年月日
      2016-06-04 – 2016-06-05
    • 国際学会
  • [学会・シンポジウム開催] 「東アジア内部の自他認識」国際学術シンポジウム2016

    • 発表場所
      厦門大学外文学院
    • 年月日
      2016-06-24 – 2016-06-26

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-22  

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