谷崎潤一郎訳『源氏物語』、通称谷崎源氏は、「作家の手による翻訳」という享受の有り方を確立したと言って良いだろう。谷崎源氏と呼ばれるものはこの世に三つ存在している。訳文が最も大きく変容したのは、昭和14年から16年にかけて刊行された第一の訳、通称〈旧訳〉と、昭和26年から昭和29年にかけて刊行された第二の訳、通称〈新訳〉との間である。 本研究は、現存されているとされる唯一の草稿、國學院大學蔵の『新訳草稿』の校本を作成することを通して、谷崎が生涯をかけて行った現代語訳の意義について考究した。四年間で谷崎源氏研究会を立ち上げ、シンポジウムと研究会を開催、「蛍」巻校本を作成、公開した。
|