本年度は、調査を通じて堀辰雄が遺した旧蔵洋書のうち、特に重要なプルーストに関わる書物に行われた書き込みがどのようなものかを明らかにした。堀が翻訳作品として発表したものと、旧蔵書への書き込み箇所との関連性を考察し、一部については書き込みの時期について推定した。また、こうした書き込みと堀の翻訳行為の関連性、創作との関連性を考察し、堀辰雄が洋書の丹念な読み込み、書き込み、翻訳という過程を経て、創作へと結実させていく過程を解明した。成果の一部は「堀辰雄旧蔵洋書の調査(七)プルースト①」、「堀辰雄旧蔵洋書の調査(八)プルースト②」として公開した。 なお、旧蔵洋書の書き込み及び翻訳行為と堀の初期作品との関連について分析を行った論考をまとめた。2016年度中には公表される予定である。
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