研究課題/領域番号 |
26770096
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
植田 麦 明治大学, 政治経済学部, 講師 (30511539)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本書紀 / 中世日本紀 |
研究実績の概要 |
初年度の研究は、主として、三嶋大社の調査とその調査結果の整理であった。調査以前の段階において、三嶋大社がいわゆる「三嶋本日本書紀」を所蔵しており、またそれに付随した三巻の書物(『神口決』『日本国二十一社本紀守護』『中臣祓解除』)についても存在は知られていたが、特に付随の資料については、その書名以外についての情報はほとんどない状態であった。調査とその結果の整理により、付随の書物について、正体が判明した。また、それらの書物が、真言宗を中心とする仏教説との関係が濃厚であることも明らかとなった。これは、三嶋本日本書紀自体の書写者が仏僧であることとも関連するものと考えられる。 また、日本書紀については、大正期において一部が切り取られ、流出している(流出部分は國學院大學が所蔵)。その切除部分についての詳細が得られたことは、重要である。というのも、特に巻第一については、國學院大學が所蔵している部分以外にも、さらに切り取られた箇所がある可能性を指摘することができたためである。 天理図書館での調査では、三嶋本日本書紀と同系統である、秋葉本日本書紀を発見することができた。これは、秋葉孫兵衞の旧蔵にかかる文献で、現在までに刊行されている天理図書館の貴重書目録には記載されていない。そのため、天理図書館自体に赴き、書誌カードを点検する必要があった。またほかにも、三嶋本と同系統である玉屋本日本書紀の写本を確認することもできた。これらにより、三嶋本日本書紀とその周辺の状況がさらに明らかになりつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、三嶋大社の調査および天理大学附属天理図書館の調査を行った。本来、これらの調査は二年目に行う予定であったが、予定よりも早く、三嶋大社での調査の許可がおりたため、前倒しをした次第である。 また、初年度に予定していた、石清水八幡宮所蔵『類聚国史』の調査であるが、蓬左文庫所蔵『類聚国史』を点検したところ、総合的にみてこちらで研究を進めた方が効率的に進捗することが明らかとなった。そのため、石清水八幡宮での調査を次年度の予定に変更した。 三嶋大社および天理図書館での調査により、多くの知見が得られたため、区分として「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で残された研究課題は、第1に未調査の文献の確認、第2に入手したデータの整理、第3に三嶋大社と真言宗寺院との関係の解明である。 第1の課題としては、特に神宮文庫所蔵の『類聚国史』の確認が急務である。夙に、国史大系の校訂において、神宮文庫本『類聚国史』の特異性は、頭注のかたちでしめされているが、それが三嶋本・玉屋本とどのような関係にあるのかは、いまだ明らかにされているとはいいがたい。そのため、神宮文庫本『類聚国史』を調査し、その内容を確認する必要がある。また、国立博物館蔵の玉屋本『日本書紀』の書誌調査も速やかに行わなければならない。 第2の課題としては、すでに得られた三嶋本のデータ整理である。すでに、大半のデータは電子データ化しているが、いまだ校訂が不完全である。 第3の課題としては、調査の過程で明らかになってきた、三嶋大社を中心とする寺社圏の実態究明である。これは、単年度の調査で全うできるものではないため、今後の研究の進展も考えながら、基礎的な調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、資料調査において、事前の予定とは異なる調査先へ赴くこととなった。そのため、本来予定していた、神宮文庫の調査をすることができなかった。昨年度からの繰越金は、その額に該当する。
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次年度使用額の使用計画 |
神宮文庫での調査の旅費として使用する。
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