(最終年度の研究成果)最終年度は、初年度に得たデータの整理を進めるとともに、それらのデータの検討を通じた研究成果の発信につとめた。具体的には学会での研究発表、および学術論文の公刊である。前者は上代文学会大会での発表として、後者は『文学史研究』での発表として行った。 上代文学会での大会では、三嶋本『日本書紀』と具書との関係について述べるとともに、その筆写状況の解明と文学史・思想史上での意義について述べた。『文学史研究』で公にした論文では、三嶋本『日本書紀』が卜部系『日本書紀』および『類聚国史』といかなる関係にあるのかについて述べ、古代後期における『日本書紀』享受の状況についても明らかにした。 (研究機関全体を通じて実施した研究の成果)本研究課題のテーマは、三嶋本『日本書紀』の在りようを総合的に考察することであった。そのため、第一に三嶋本『日本書紀』の現物にあたっての文献調査、第二に『日本書紀』の具書の文献調査、第三にそれらの調査データの整理、第四に三嶋本『日本書紀』および具書と関連が深いと考えられる資料の調査と研究、第五にそれらの総合的な検討を予定した。結果として、第一から第四までの予定を完遂し、第五も事前の目的をおおむねクリアすることができた。 これらの研究から、今後の課題として、第一に三嶋本『日本書紀』を取り巻く思想史的環境の解明、第二に三嶋本を含む非卜部系『日本書紀』写本の在りようの考究、第三に720年以降に『日本書紀』がテキストとしていかに享受されたのか、その状況の検討の、三点が浮き彫りとなった。
|