本研究は19世紀英国で活躍した作家オスカー・ワイルドと彼と関わりのある女性作家のテクストに描かれた服装や室内装飾に注目し、対象テクストの新たな解釈と同時代的意義を問い直すことを試みた。その結果、分析した2つのワイルドのテクストのうち、一方ではテクスト内での〈唯美主義〉や〈唯美主義運動〉の描かれ方が浮き彫りになり、他方ではヴィクトリア朝で時に否定的な目で見られた、女性による恋愛の場での意思表示が肯定的に描かれている、という解釈を示せた。また女性作家に関しては、従来あまり注目されてこなかった当該作家の特定作業から始めテクスト分析を進めるうち、当該作家の〈女性唯美主義者〉としての重要性が見えてきた。
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