研究課題/領域番号 |
26770108
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
小林 久美子 法政大学, 文学部, 准教授 (30634117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / フォークナー / 宗教と文学 / モダニズム |
研究実績の概要 |
本研究では、大量消費やテイラー式時間管理法といった、物質主義的・合理主義的文化が興隆を迎えようとしていた20世紀初頭の米国において、特定の宗派にとらわれることのないさまざまな非-制度的宗教がいかに当時の文学作品に表象されていたのか、ということを探るものである。「教会」という組織に守られた制度的宗教の形骸化が加速度的に進行するなか、民衆の新たな救済となったのは、個々人がそれぞれ体験する超越的な出来事であり、それはありふれた日常のさなかで起こるものである、ということをモダニストの作家たちは繰り返し描いた。2年度にあたる本年は、平成27年度の基盤調査で得られた結果をもとにして、研究結果を学会の口頭発表で報告することを目標とした。モダニズム文学における非-制度的宗教の所在について考察を進めた結果、深く関心を寄せるようになったのが、「日常」という舞台である。近代化が推進した空間の分断化(「社会」と「家庭」、「都会」と「郊外」、「工場」と「オフィス」など)において、「日常」はどのように機能しているのか。こうした問題意識をもとに、モダニズム文学の白眉とされるウィリアム・フォークナーの『響きと怒り』を分析し、その結果を2015年10月に京都にて行われた日本フォークナー協会において報告した。本発表では、『響きと怒り』においてもとりわけ名高い「ベンジー・セクション」における革新性が、いかに「日常性」の特質に立脚しているものであるかということを論じたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年度の目標は、基盤調査の分析結果を口頭発表することにあった。考察を進めた結果、あらたなる宗教性の在処としての日常という場にあらためて着目することになったことは大いなる収穫だと言える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2016年度においては、宗教性の在処の表象として、ウィリアム・フォークナーの『行け、モーゼ』の精読を行う予定である。口頭発表ではなく、活字にすることに専心し、まとまった長さの論に仕上げる所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は海外文学を扱うため、洋書を注文することが多い。海外の書店から注文は時間がかかることが多く、注文は年度内であっても、配達は次年度になるということがままある。
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次年度使用額の使用計画 |
前述の通り、海外のオンライン書店からのタイムラグによって次年度使用額が生じたということなので、もう2016年4月の段階ですでに次年度使用額はほぼ使い切る予定である
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