研究課題/領域番号 |
26770109
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
杉本 裕代 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (20581797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカンコミック / 南部知識人 / アラン・テイト |
研究実績の概要 |
オコナー批評の現在の動向から、身体文化と現代文化のキーワードで分析を行った。 1つ目に、Jon Lance Baconによる、2005年のFlannery O'Connor and Cold War Cultureがある。冷戦期の大衆文化(SF映画、アメリカン・コミック、ホラー小説)の中にある、冷戦期的詩学(暗黒イメージの強調、平和な空間に外部からの侵入者が突然現れる、といった他者表象とパニック)を挙げ、オコナー作品にも、同じ構図があることを指摘した。オコナー作品に同時代的な政治性を読み込むことを可能にした点で、Baconの功績は大きい。しかし、その構図を指摘するにとどまり、オコナー作品が、なぜ、ここまでアイロニーに満ちてるのかは説明していない。 2つめに、2009年は、David H. Evansにより、精神医学のアプローチから、画期的なオコナーの身体表象論が登場した。 “CUT! … Flannery O’Connor’s Apotemnophiliac Allegories”における、「Apotemnophilia」とは、自らの四肢を切断することを望む精神様態、自らを四肢切断患者として妄想することで性的興奮を得る精神疾患を意味する。この論考は、 “What is a man?” という問いかけが、オコナー作品の根底にあると論じる点で、本研究と着想の共通点がある。 イギリス出張の際の「文学と風刺」ワークショップなどで意見交換を行い、オコナー作品の批評について、理論的視座の再検討を行った。オコナー作品でこれまで寓意的な笑い、とされてきた事象や場面について、具体的な文化史的文脈と関連付けることができた。女性の身体がもつ男性性、Female Mascurinityのキーワードに到達することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論的視座の整理に時間を費やした結果、議論の方向性は固まったが、発表媒体などについて適した場所をみつけられず、論文化することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の成果をうけて、フェミニズムのアイコンとしての「ワンダー・ウーマン」の資料収集を行う。ワンダーウーマンについては、昨年より、アメリカンコミックと女性のクリエイティビティなどを扱う研究成果がでてきている。また、ドキュメンタリー映画「Wonder Women! The Untold Story Of Superheroines」(2012)の分析を行うことで、1950年代のフェミニズムに関する理論的枠組みの検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、理論的研究に集中したため、当初予定していたオコナーの挿絵コレクションや、アメリカンコミックの一時資料に対する収集作業が行えなかった。これに伴い、資料の購入や、資料収集に必要なスキャナーの購入などを見送ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
スキャナーの購入、および資料の購入に充てる。
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