研究課題/領域番号 |
26770109
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
杉本 裕代 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (20581797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | フェミニズム / 1950年代 / サードウェーブ / ガールスカウト |
研究実績の概要 |
冷戦期の女性表象を検討する手がかりとして、2つのテーマで調査に取り組んだ。ひとつは、1950年代・60年代のフェミニズム思想・潮流を把握すること。ベティ・フリーダンの『フェミニン・ミスティーク』を題材として、彼女の思想を歴史化する作業を試みた。フリーダンの伝記的研究に基づきながら、彼女が初期において共産主義思想への系統を示しつつ、後に距離を置くに至ったプロセスを、自由経済とフェミニズムとが絡まり合うプロセスを重ねて考察することを試みた。また、『プレーボーイ』誌におけるフリーダンへのインタビュー記事などを検証しながら、1980年代以降のフリーダンの受容・表象を分析した。この時代のフリーダンの思想的変遷・実践態度の「転向」は、現代において、私たちが、とりわけリベラリズムの歪曲とグローバル経済の台頭のなかで、フェミニズムが巻き込まれている状況、新自由主義的な状況について考察する基礎となることを確認した。 もう一方の柱として、オコナー幼少期の伝記的調査を進めることができた。オコナーの少女時代は、彼女自身が短命だったこともあり、重要な部分であると考えられる。カトリック思想の影響は、繰り返し言われてきたことだったが、それ以外にも、彼女が幼少期を過ごしたジョージア州・サヴァンナでの調査によって、彼女の同時代には、「ガールスカウト」が盛んな地域であったことを大きな手掛かりとして、オコナー作品における少女像・女性像に対する影響を考察することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来の計画ならば、2015年度中に、アメリカンコミックと冷戦期女性表象との関係性を分析する予定であったが、日本未発売の映像作品であること、映像再生設備が整わないなどの理由により、この部分の作業をまだ完了させていないため。2016年度の6月までに完了予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、アメリカン・コミックの現在に関する資料調査を行いながら、本研究課題の総括を行う。サードウェーブ・フェミニズム研究会との連携により、現代的な文脈において、フェミニズムが抱えざるをない様々な対立やねじれに対する考察を言語化し、オコナーがそうした現象を、現象レベルとして意識しながらも、言説化することができなかったために、矛盾を身体表象として描いたという点を、明確化する。それにより、オコナーの現代的な意味合いの再評価を提起する。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析を予定していたドキュメンタリー映画_WONDER WOMEN! The Untold Story of American Superheroines_の入手について、映像再生環境の確保が、現在の研究状況では困難だったことや、研究協力者の所属変更等に伴い、研究集会を年度内に開催することが難しかった。
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次年度使用額の使用計画 |
映像関係の環境整備の目途も立ち、関係者との日程の調整も進みつつあるので、映像の分析を6月中までに済ませ、研究集会7月の開催を計画している。
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