研究課題/領域番号 |
26770109
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
杉本 裕代 東京都市大学, 共通教育部, 講師 (20581797)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ワンダー・ウーマン / コミック / サード・ウェーブ / リトル・プレス / フェミニズム |
研究実績の概要 |
現代のフェミニズムをめぐる状況とオコナー批評を検討する活動を行った。アメリカンコミックについては、サード・ウェーブフェミニズムとの関連性を考えるために、サンフランシスコでの資料調査をはじめ、現代的な文脈について、研究協力者と議論を交えることができた。 その中でも、アメリカ西海岸のリトル・プレス文化、ZINEと呼ばれる同人誌文化と、女性たちの文化について考察できたのは大きな意義があった。現代文化のなかで女性たちが発信する文化から着想をえて、オコナーがどのような媒体で作品を発表していたのか、学生時代の同人誌活動についてなどの調査について着想をえることができた。 また、ワンダー・ウーマンが1970年代のフェミニズム運動のアイコンであったことを取り上げたドキュメンタリー映画 Wonder Women!について、分析を進め、第2派フェミニズムの動きを歴史化する作業を進めた。この映画を分析することは、ワンダー・ウーマンの歴史的な解釈の変遷を分析することになり、第2派フェミニズムが現代文化のなかでなにが足りなかったのか、あるいは、反省するべき点はどこになるのか、女性の団結の象徴であったキャラクターが、いつしか、女性の断絶の象徴になってしまうのは、なぜなのかという問いについて議論した。これらの作業を通じて、字幕付け作業などを行い、教材として仕上げることができた。また、これらの議論について紹介するべく2017年のカルチュラル・タイフーンにて、上映会を開催して、議論の時間も設ける予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
この課題を申請した際には予期しなかったこととして、2017年夏に「ワンダー・ウーマン」の映画が公開されることが決定した。また、それに伴い、国連の名誉大使キャラクターとして、ワンダー・ウーマンが起用されたものの、その就任セレモニーでは、国連の女性職員たちが、起用に対する抗議パフォーマンスを行うなどで、世界中で報道された。国連の女性職員たちの主張とは、「ワンダー・ウーマン」は、現代の女性を代表などしておらず、男性中心主義的な価値観を体現しているにすぎないというものである。この論点こそは、まさに本課題が焦点を当ててて来た部分であり、それが現実社会でも具現化した形となった。 そのため、これらの文化的進展を見定めたうえで、本研究の課題の総括にとりかかるべく、研究機関を延長した。
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今後の研究の推進方策 |
こうした社会的状況のなかで、今夏公開される映画「ワンダー・ウーマン」がどのようなキャラクター表象を行うのかは本研究課題のまとめとして考えるべき話題となっている。 2017年のカルチュラル・タイフーンでの上映会など、研究者にとどまず広く議論することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の、ワンダー・ウーマンをめぐる社会的状況の変化によって、ドキュメンタリー映画の上映会を予定していたが、その映画のもつ文化的意味を見定めることに時間がかかり、上映会の実施および、論文執筆を完成できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年のカルチュラル・タイフーンにて、研究対象としているドキュメンタリー映画の上映および討論会を行う。また論文を完成させて、発表する。
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