研究課題/領域番号 |
26770110
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
宮澤 直美 京都産業大学, 外国語学部, 准教授 (50633286)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 銀板写真 / 19世紀アメリカ文学 / エドガー・アラン・ポー / 視覚芸術 / リアリズム / ロマン主義 / 肖像画 |
研究実績の概要 |
平成27年度は、8月末から9月初旬にかけての米国での資料調査と帰国後の資料分析を中心に研究を進めた。米国では、フィラデルフィア公立図書館(Philadelphia Free Library)、エドガー・アラン・ポー国立歴史地区(The Edgar Allan Poe National Historic Site)、ニューヨーク公立図書館などを訪れ、1840年代から1860年代の銀板写真関連の資料を収集した。特にニューヨーク公立図書館内のバーグ・コレクション(Henry W. and Albert A. Berg Collection of English and American Literature)と貴重書部門(Manuscripts, Archives and Rare Books Division)では、ポー、ホーソーン、エマソンと視覚芸術に関連する貴重な資料を読む機会に恵まれた。また、初期の銀板写真家の多くを排出したフィラデルフィアでは、チェスナット通り界隈で調査を行い、同地に住んでいたエドガー・アラン・ポーの作品が当時のフィラデルフィアから受けた影響を考察する上で重要な調査ができた。 これらの調査結果、資料を帰国後に分析し、19世紀前半のアメリカ文学に銀板写真が与えた影響について新たな解釈を示すべく論文執筆作業にとりかかった。資料分析の他、写真と文学の関連性についての先攻研究を体系的に網羅するために伊藤詔子、Michael J. Deas, Barbara Cantalupo, Susan Elizabeth Sweeney, Susan S. Williams, John Treschらの研究書にあたり執筆を進めた。直接写真を作品に登場させていない作品にも、写真という新たな表現媒体が与えた影響を読みとることができる点を、個々の作品に即して明らかにし、新たな作品の読み方を提示すると同時に、視覚芸術と文学というジャンルの連動性を示すことを目指す論文を執筆し米国雑誌に投稿した(現在査読審査中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画では口頭発表をする予定であったが、論文として投稿することに変更したために、論文執筆により多くの時間を費やした。また完成した論文を査読審査期間が約半年という米国雑誌に投稿したため、成果が認められるかどうか判明するまで時間を要している。冬にも渡米を計画していたが、校務や他の論文執筆に時間を要したため実現できなかった。以上の理由から、本年度は研究計画よりもやや遅れているため3を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、ロマンティシズムとリアリズムの双方の要素を兼ね備えていた銀板写真が、ロマン主義文学からリアリズム文学への移行期に書かれたアメリカの文学作品にどのような影響を与えたのかを検証していくことを大きな目標にする点では計画通りの方向性で進めていく。ただ、経費執行の面では計画の変更を予定している。具体的には平成27年度アメリカでの調査が一度だけに留まり、さらに口頭発表を論文発表に計画変更したことが主な原因で、旅費を中心とした経費を平成28年度に繰り越す結果となった。これを受けて、当初の計画には盛り込まれていなかった平成28年度の海外調査研究を実施し、海外での資料収集を進め、研究の遅れを取り戻す計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では年2回の海外での調査研究に加え、海外での口頭発表を予定していたが、調査研究は1回に留まり、また口頭発表ではなく論文として投稿することに変更したため、海外渡航のための旅費の執行が進まなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、当初の計画には盛り込まれていなかった海外調査研究を実施し、平成27年度に予定していた旅費を執行し、研究の遅れを取り戻す計画である。
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