研究課題/領域番号 |
26770111
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
日高 真帆 京都女子大学, 文学部, 准教授 (90407619)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 演劇 / 比較文学 / 比較文化 |
研究実績の概要 |
前年度に得られた結果を基にして引き続き調査研究や研究成果論文の執筆を進め、関連する英文学作品やそれらの日本に於ける受容に関する資料を幅広く収集し、先行研究の調査も行った。具体的には、明治・大正時代に該当する19世紀末前後の時期に発表されたイギリス・アイルランド演劇の内、同時代に日本に移入された作品を洗い出すため、緻密な資料調査を続けた。調査対象資料は多岐に渡るが、第一に、『演藝画報』等の演劇雑誌を始めとする各種雑誌等の関連資料を扱い、分析を行った。また、同時代の日欧演劇交流の関連文献についても情報収集に努めた。 また、これまでのワイルドの作品研究の総括を行うと共に、原作への理解と日本に於けるワイルドの作品受容への理解を繋げるべく、ワイルドの短篇小説、長篇小説及び戯曲を中心に、ワイルドの作品研究を幅広く行い、異なるジャンルの作品間の関連性についても分析を深めた。その研究成果として、2016年3月に開文社出版より英文による単著 “Oscar Wilde Reappraised: Fiction and Plays” を出版するに至った。 本書は全十章から構成される英文による単著であり、総頁数は252頁である。具体的には、短篇小説集『アーサー・サヴィル卿の犯罪他三篇』、長篇小説『ドリアン・グレイの肖像』、悲劇『サロメ』及び四編の喜劇作品『ウィンダミア卿夫人の扇』、『つまらない女』、『理想の夫』、『真面目が肝心』を主に扱い、これらの作品を個別に分析すると共に、ワイルドの作品間やワイルドの作品と同時代の他の作家の作品との比較研究も進め、更に『獄中記』とも議論を関連づけた。このように、敢えてジャンルを越えてワイルド及びその関連作品を扱うことにより、後世にも多方面で影響を与えたワイルドの多面性及び異なるジャンルの作品間の関連性の解明を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
19世紀末前後の時期に発表されたイギリス・アイルランド演劇の内、同時代に日本に移入された作品について調査研究を進め、日本と欧米での受容の相違についても分析を進めることができた。 また、ワイルド研究に関してこれまでの研究成果を英文による単著として出版できた意義は大きい。 研究対象が広い故に広汎な調査が行えていない部分もあるが、想定範囲内であり、おおむね経過は順調であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26ー27年度に得られた結果を基にして、引き続き調査研究や研究成果論文の執筆を進める。平成26ー27年度の研究実施計画に挙げた研究活動は、殆どが継続的研究を必要とするものであるため、それらの研究については平成28年度も続行することとする。 尚、国内外に於ける関連分野の研究の最新動向の確認も随時行い。関連研究資料の収集も逐次行う。そのためにも、国内外の関連学会にも積極的に参加して研究発表も行い、研究論文の執筆も進める予定である。 具体的には、平成28年度7月に開催予定の International Comparative Literature Association 国際大会にて研究発表を行い、研究成果を纏める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全体的に支出が少なかったが、これは第一に今年度の主たる研究業績である単著を出版する上で既に執筆のための資料収集をほぼ終えていた上、新たな資料収集については図書館での文献調査が多かったため、余り図書を購入せずに研究を進めることができたということ、第二に今年度の研究活動に於いて単著執筆に多くの時間を費やしたため、海外出張費や人件費・謝金が掛からなかったということに起因するものである。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会での研究発表や図書・視聴覚資料を含む資料収集、研究に必要な物品購入のための費用が必要となる予定である。
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