研究課題/領域番号 |
26770112
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研究機関 | 広島経済大学 |
研究代表者 |
本岡 亜沙子 広島経済大学, 経済学部, 准教授 (70582576)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / アメリカ文化 / ルイザ・メイ・オルコット / スクラップブック |
研究実績の概要 |
平成27年度、筆者は市民公開講座での講演1回と論文1本の執筆を行った。研究実績は以下の通りである。
1. 平成27年11月17日、「知っているようで知らないアメリカのこと」(全4回)における担当回「ザ・ベストテン─文芸アメリカン・アイドル48全員集合」にて講演を行った。その中で、スクラップブック帳の特許権を取得したマーク・トウェインなど、アメリカの作家について紹介した。
2. 1の発表原稿を加筆修正した単著「19世紀後期アメリカにおける作家の宣伝活動 ──ホイットマン,トウェイン,ワイルドを中心に──」をまとめられた。本論考では、本来裏方に回る芸術家がセルフ・プロデュースを施し表舞台に出てくるという、1830年代以降のアメリカ出版業界に起こった芸術の世俗化現象について詳察した。各章において、以下3名の代表的職業作家を扱った。第1章では、作品の形式や内容にさまざまな付加価値をつけることで、詩集のブランド化を目指したホイットマンを扱った。第2節では、出版形式にこだわりを見せたトウェインに焦点をおいた。第3節では、自分自身をまず宣伝し、その知名度を利用して作品や講演の成功を目指したワイルドを取り上げた。結果として、発展する出版ビジネス界における売れっ子作家たちの試行錯誤を詳らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度、筆者は「19世紀後期アメリカにおける女性運動 ―ルイザ・メイ・オルコットのスクラップブックを中心に」をテーマに、資料の収集とその精読を経て、学会発表、論文執筆、国内外の学術雑誌への投稿を行なう計画を立てていた。この研究計画と今年度の研究実績を照らし合わせると、筆者の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。その理由は以下の通りである。 1. 平成26年度の研究成果の一部を、市民公開講座で紹介することができた。また、その内容を加筆修正した上で論文にまとめることができた。 2. スクラップブックの登場するオルコットの短編作品をとおして、女性と仕事、子ども、教育について考察することができた。この内容については、「オルコットの短篇小説と新しいアメリカの教養」というタイトルで、平成28年6月12日に行われる中・四国アメリカ文学会第45回大会シンポジウム「アメリカ文学の独立」にて報告する。 3. 2の内容をさらに、共著『知のコミュニティ』(彩流社、平成29年度に出版決定、平成28年度研究成果公開促進費に採択済み)に寄稿することが決定している。 4. 論文「現代のファンダム文化と19世紀アメリカの素人劇団における集合知の力学 ―ルイザ・メイ・オルコット未発表脚本を中心に」をさらに加筆し、共著Thoreau in the 21st Century: Japanese Perspectivesに寄稿する(論文掲載決定)。本論文では、オルコットの未公開脚本とその草稿2種類を、ヘンリー・ジェンキンスのファンダム(fandom)という視点から精査し、複数人が寄り集まることで想像力を喚起していく作家の文芸創作上のメカニズムを明らかにする。本草稿研究をとおし、作家個人の才能として論じられてきた創作が、実は複数の親密な人間たちの交渉によって織り成されていたということを指摘していく。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度、筆者はまず、「現在までの達成度」の2で記したスクラップブック調の短編小説を主要テクストとした論文「オルコットの短篇小説と新しいアメリカの教養」を、中・四国アメリカ文学会第45回大会のシンポジウム「アメリカ文学の独立」において発表する。(平成28年6月11日、於:広島経済大学(広島県広島市)) 次に、「現在までの達成度」の3のとおり、上記の内容を論文にまとめ、「オルコットの短篇小説と新しいアメリカの教養」(仮題)共著『知のコミュニティ』に寄稿する(論文掲載決定)。 また「現在までの達成度」の4のとおり、論文「現代のファンダム文化と19世紀アメリカの素人劇団における集合知の力学 ―ルイザ・メイ・オルコット未発表脚本を中心に」を執筆し、共著Thoreau in the 21st Century: Japanese Perspectivesに寄稿する(論文掲載決定)。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度、筆者は資料収集のため海外渡航を計画していた。しかし、公務の都合で渡航が叶わなかった。そのため、平成27年度の海外渡航用経費を平成28年度予算に繰り越すことにした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度、筆者はオルコットや同時代の作家にとってスクラップブックの果たす役割や意義をさらに追究するため、スクラップブックに関する資料(図書含む)を購入する。また、長期期間中にオルコットのスクラップブックを所蔵するハーバード大学ホートン図書館や、彼女の生地にあるコンコード公共図書館、実家オーチャード・ハウスへ行き、彼女のスクラップブックに関する研究資料の収集に行き、より徹底した調査を行う。
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