研究課題/領域番号 |
26770116
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
中里 まき子 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (40455754)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ジャンヌ・ダルク / シャルル・ペギー / ジョルジュ・ベルナノス / 国際研究者交流 / フランス |
研究実績の概要 |
文学作品に描かれるジャンヌ・ダルク像は多様なものであり、特に彼女の言語については、対極的な二つの解釈がなされた。20世紀の多数の作家が処刑裁判記録におけるジャンヌの言葉に魅せられたのに対し、ペギーとベルナノスは少女の沈黙に心を寄せた。今年度は主にベルナノスの作品を検討対象とし、ジャンヌ・ダルクの沈黙に対する作家の関心にはいかなる背景があるか、また、寡黙なジャンヌ像を着想源としてどのような文学創作がなされたかを探った。 具体的には、まず、ジャンヌ・ダルク処刑裁判を題材とし、少女の純粋な言葉が失われる過程を描く文学的エッセー『戻り異端で聖女のジャンヌ』(1929)と同時期に書かれた論戦文『良識派の大恐怖』(1931)の読解から、ベルナノスの言語観、すなわち、第一次世界大戦後における言語の失墜の意識を浮き彫りにした。 続いて、小説『欺瞞』(1927)及び『歓び』(1928)の主人公シャンタル・ド・クレルジュリと、エッセー『戻り異端で聖女のジャンヌ』のヒロインが同様の運命を辿ることに着目し、比較検討した。その結果、ベルナノスの文学において言葉の喪失と信仰の喪失とが一致すること、また、作家が、ジャンヌ・ダルク、テレーズ・ド・リジュー、イエス・キリストを重ね合わせつつシャンタル・ド・クレルジュリの人物像を構築したことが明らかになった。 こうした研究の成果を、論考『言葉なき世界のエクリチュール ジョルジュ・ベルナノスの文学』として投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベルナノスの小説『欺瞞』及び『歓び』は解釈が困難とされているが、研究協力者エリック・ブノワ教授(ボルドー・モンテーニュ大学)からの助言によって理解を深め、独自の解釈を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
二人の作家のジャンヌ・ダルク解釈と、彼らの政治的・宗教的立場との関連性を探る。ベルナノスについては『カルメル会修道女の対話』を研究対象とし、国際シンポジウム『文学と芸術における宗教・民族をめぐる問い』において口頭発表を行う。ペギーについては、エリック・ブノワ教授による講演会を開催し、通訳を務める。 上記研究のためにフランス国立図書館やボルドー・モンテーニュ大学図書館において文献収集を行う。
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