20世紀末の欧米社会に多大な影響を及ぼした病気であるエイズについて、エイズ表象の形成課程を考察した。欧米社会に病気が蔓延し始めた1980~1990年代までに執筆された文学作品を対象に、前代未聞の病気がどのように文学イメージとして描かれたかを詳細に検討した。(1)エイズ文学の代表的作家エルヴェ・ギベールの作品に見られる病気表象、(2)エイズに関連した自伝的作品における病気、および患う主体の視覚的イメージ、(3)文学と映画という異なる表現手法に見られるエイズ表象の相違、(4)盲人表象を通して見る視覚的イメージ、(5)文学におけるエイズ表象形成に与えたマスメディアの影響について、考察を行った。
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