今後の研究の推進方策 |
本研究は、文学における文化的記憶の言説について、言説の内容と形式の両方について考察してきた。具体的な論点と、それに関する文学作品の作者を簡単に記すと下記のようになる。 1 記憶の内容の分析:冷戦後の歴史観(Schalansky)、東ドイツ崩壊とナショナリズムの関連(Wolf, Rosenloecherその他多数)、これらの問題と絡み合う進化(論)や動物のモチーフ(Schalansky, Sebald、Beyer)、など。 2 (文学における)記憶の言説の形式:複数の登場人物(Sebald、Erpenbeck)、非直線的な想起の語り/アイデンティティを揺るがす想起(Wolf, Seiler,その他)、 3 文学にあらわれる記憶の概念:記憶は保存されるという幻想、それにまつわる比喩的形象(Celan, Sebald, 19世紀の引用Hebel) 今後は、それぞれの論点について、これまで個別に分析した事例をもとに、より包括的な視野から議論を発展させることが最も重要な課題となる。その際は、Aleida AssmannやPierre Noraをはじめとする記憶論のスタンダートと、文学における想起とを対照し突き合わせる理論的作業も、既に個々の論文では述べてきたことだが、改めてまとめていきたい。また、その作業と並行しつつ、改めて東ドイツとその後の文学にさらに着目したい。これは2019年にベルリンの壁崩壊30周年を迎え、関連する議論の場が増えるであろうことを見据えての作業となる。2019年に行われる議論に参加していくために2018年度に準備、応募、投稿、といった作業を進めたい。
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