最終年度の2018年度には、前年に延期したドイツでの資料収集と研究交流を実行することができた。ベルリン・フンボルト大学の図書館でとベルリン州立図書館において、ドイツ現代文学の最新の研究書・雑誌を閲覧し、研究動向をチェックできたのは有意義であり、また本研究課題との関連が深い論文をコピーできた。ベルリンではフンボルト大学の教授や若手研究者たちと情報交換や議論を行った。さらに、ポーランドのワルシャワでも調査を行い、共産主義時代の生活博物館、ワルシャワ蜂起博物館やポーランドユダヤ博物館では貴重な映像資料などを閲覧し、街路でも記念碑を見学することができ、想起の文化にたいする知見を深めた。 最終年度には出版物を出していないが、本研究課題と関連するテーマで、既に執筆・提出し、出版を待っている状況の原稿がいくつかある。それは三つの学術論文(いずれも国際学会での報告をもとにし発展させた論文である)と、二つの事典記事である。 また、本研究課題以前に行った報告者の博士論文の研究は、本課題に直接発展するテーマのものであり密接な関係がある。2013年度にドイツで出版した著書(博士論文)の書評が、2018年の前半にフランスの研究者たちのインターネット・サイトに掲載された(フランス語とドイツ語で)。また、最近出版された関連テーマの複数の研究書で著書が引用・言及されていることが、資料収集の過程で確認できた。書評や他人の論文内における言及によって、報告者の研究がどのような視点で受けとめられているかを知ることができた。このことは本研究課題を進める中で得られたひとつの成果でもあり、同時に、さらなる研究の発展の材料ともなる。
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