研究課題/領域番号 |
26770120
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
三田 順 北里大学, 一般教育部, 講師 (20723670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 受容研究 / スロヴェニア文学 / ベルギー幻想文学 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、文献収集をベルギー、オーストリア、スロヴェニアで行いつつ、各地における象徴主義受容の背景を整理した。また、受容研究というアプローチ上、特に本研究テーマの重要な先行研究であるスロヴェニア語の論文を翻訳発表した。また、ベルギー象徴主義の他国での受容を考察するにあたり、ベルギーの象徴主義文学を「ベルギー」たらしめている独自の性質を整理すべく、象徴主義という美学に内在している「幻想性」に注目し、ベルギーにおける「幻想」の系譜を、象徴主義受容と共に登場し、ベルギー的アイデンティティーと結びつけられて行くことになる「現実的幻想」という美学を手掛かりに検討した。これによって象徴主義の時代の前後におけるベルギー文化のアイデンティティーの所在、その変遷を明らかにすることができた。この成果については研究会での発表を経て、自身が編者を務めた近刊の論集に収録予定の論文「ベルギーにおける「現実的幻想」の系譜──文学と絵画における「ベルギー的」美学の源泉を求めて──」にまとめた。この中では特に、ベルギーの文学においても、絵画の伝統がアイデンティティーの核となっており、特にその写実的表現に「ベルギー性」が指摘された一方で、象徴主義の時代に登場した「幻想性」が、新たなベルギーのアイデンティティーとして浮上したことを指摘し、ベルギー象徴主義に「現実的」な「幻想」という独自の美学が生まれたことを明らかにしている。並行して行っている研究では、この美学が他国ではどのように受容されていったのか個々の作家に焦点を当てて調査を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き、文献収集、先行研究の整理をおおむね予定通り進めることができた。研究のアプローチに修正を加えたことで、追加調査が必要となったものもあるが、これについては次年度に調査を行う。今年度までの調査、研究の成果は、口頭発表を行った他、自身が編者を務めた論集に収録、出版されることが決まっており、順調に成果を形にすることができている。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していた研究テーマは予想以上に大きかったため、アプローチを修正し、個別の作品、作家研究へと切り替えている。必要な調査については、勤務先での授業が無い期間に現地に渡って行う。また、国内外の学会の全国大会および国際大会にエントリーを済ませ、これまでの成果の発表を行うことが決まっており、その後論文として形にする予定である。
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