最終年度は、これまでのアウトプットに重きを置き、年度前半に成果の一部を国日本比較文学会全国大会、およびウィーン大学で度開催された国際比較文学会で発表し、質疑応答や学会において交流する機会を得た国内外の研究者から多くの有益な示唆を得ることができた。その後、発表を基にした論稿を日本比較文学会の学会誌に投稿し、掲載が決定している他、国外の学会誌への投稿も予定している。また、本研究課題の核である「ベルギー的美学」の所在について論じた論考「ベルギーにおける「現実的幻想」の系譜─文学と絵画における「ベルギー的」美学の源泉を求めて─」を収め、自身が編者を務めた論集『ベルギーを〈視る〉テクスト―視覚―聴覚』を11月に刊行することができた。 ベルギー的象徴主義の他国における受容については、個々の作家研究へとアプローチを変更し、中でもベルギーのフランス語圏とドイツ、オーストリアのドイツ語文壇において独仏二言語で創作活動を行ったベルギー人詩人ポール・ジェラルディーに焦点を当てて調査、研究を行い、その成果を論文(「境界地の作家ポール・ジェラルディーとドイツ語詩――ベルギー・ドイツ語文学における象徴主義――」)として発表した。その他、初年度より企画、編集を務めて制作を進めていた、ベルギー・フランス語圏における象徴主義を含む「幻想文学」の翻訳アンソロジー『幻想の坩堝 ベルギー・フランス語幻想短編集』を12月に刊行し、研究成果の一部を広く社会にも発信することができた。
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