研究課題/領域番号 |
26770123
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
深井 陽介 東海大学, 外国語教育センター, 講師 (60623410)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ランボー / ミュッセ / 主体 / 自伝 / ポリフォニー / 第一次ロマン派 |
研究実績の概要 |
まず、ロマン派における主体の特徴を明らかにするために、ポール・ベニシューの『作家の聖別』、『預言者の時代』、『幻滅の流派』やジョゼ=ルイーズ・ディアズの『架空の作家』などの先行研究を踏まえ、第一次ロマン派における主体の特徴について分析を試みた。次に、2015年3月5日・6日にパリ・高等師範学校及びシカゴ大学パリキャンパスで行われた国際学会での研究発表の準備に取り掛かった。具体的には、ミュッセの自伝的小説『世紀児の告白』を詳細に検討し、ランボーの自伝的作品『地獄の季節』と比較した。この研究は「自伝のフシクション化」という題目で発表された。『世紀児の告白』において主人公オクターヴは過去を美化し、現実を嫌悪している。また思い出や記憶を夢や眠りと類似したものと捉えている。これらはランボーの『地獄の季節』にも共通して見られるテーマである。さらに、『世紀児の告白』のオクターヴとブリジットのカップルは『地獄の季節』の「地獄の夫」と「狂った処女」の関係に類似しており、錯乱や狂気という共通テーマを有している。最後に、両自伝的作品においては、主人公の内的対話や葛藤、それに二面性が存在することを明らかにし、それがランボーの多声性と深くかかわることを証明した。本研究の意義は、一人の作家研究の枠組みを超えて、広い視点からフランス19世紀の自伝的作品の特徴を捉えたことにある。ランボーはミュッセを強烈に批判していたが、実は『地獄の季節』と『世紀児の告白』には多くの興味深い共通点が存在する。この両作品を詳細に比較した研究は存在しなかった為、19世紀フランス文学研究の新たな一側面を明らかにすることができた。尚、学会発表の原稿作成にあたってはパリ第4大学のミシェルミュラ教授から貴重なご助言、ご指摘を頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はフランス・高等師範学校での学会発表の招待を受けたことにより、ランボー・ミュッセの自伝的作品に関する研究を大きく進展させることができた。学会には世界各地から研究者が参加したが、申請者の発表「自伝のフィクション化」は良い評価を頂くことができた。ただ、交付申請書において1年目に予定していた計画を一時保留し、2年目に予定していた研究を先に行った為、1年目の研究に戻って第一次ロマン派全体を「主体」という観点から捉えなおす必要がある。従って次年度は1年目の研究を完了させ、2年目の研究をより発展させる。
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今後の研究の推進方策 |
学会発表の関係で、当初1年目に予定していた「ロマン派における抒情性と主体」を一旦保留して2年目の「ミュッセにおける私、ランボーにおける私」の研究に先に取り掛かった。従って次年度は1年目の研究に戻り、特にゴーチエの『ロマン主義の歴史』の分析と19世紀後半におけるロマン派受容について深く考察したい。また、同時進行でランボー・ミュッセに関する学会発表の内容を論文として出版し、さらにミュッセの詩作品や劇作品における主体の研究を深める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究に必要な物品費が節約できた為、使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は書籍購入費や謝金として使用する予定である。また翌年度の助成金は、フランスロマン主義関連図書費、国内学会参加費、フランスでの研究調査・研究会参加に必要な旅費、消耗品の購入費などに使用させていただく予定である。
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