研究実績の概要 |
まず、2015年3月5日にフランス・パリ高等師範学校において発表した「自伝のフィクション化」を出版する為、論文にしてシカゴ大学パリキャンパスの編集部に送った。この内容は書籍として2016年度中にフランスで刊行される予定である。ランボーがミュッセを嫌っていたのとは裏腹に、実は自己の矛盾や分裂という共通のテーマを持っており、その文体にも類似の箇所が見られることを明らかにした点で、19世紀フランス文学に新たな視点を見出すことができた。次に、第一次ロマン派の自伝性を分析するために、自伝に関する研究書『自伝』(Jacques Lecarme・Eliane Lecarme-Tabone, Armand Colin, 2004)や『フランスにおける自伝』( Philippe Lejeune, Armand Colin, 2014) などを参照しながら、第一次ロマン派を「主体」という観点から捉え直す研究を行った。また、ユゴーの『静観詩集』の分析に入った。これは、第一次ロマン主義文学における「主体」を再考するという意義がある。その際『ヴィクトル・ユゴーにおける抒情的主体の詩学』(Ludmila Charles-Wurtz, Champion, 1998)など、当該分野に関する最新の研究書を参考資料とした。この研究は現在も継続中であり、2016年度の『東海大学外国語教育センター紀要』や日本フランス語フランス文学会・秋季大会で発表される予定である。尚、研究の方向性や妥当性に関しては引き続きパリ第4大学のミシェル・ミュラ教授から貴重なご助言を頂いた。
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