本研究では第一次ロマン派とランボーの詩学を、歴史的背景や文体などの面から細密に比較・検討することによってその差異を明らかにし、19世紀フランス詩が変貌していく様を明らかにしようとした。3年の研究機関を通して、研究期間に解明しようとしたユゴー・ラマルチーヌ・ミュッセの文学作品とランボーの主体性について総括的に研究し、詩作品・散文作品の中で現れる自伝性について研究した。とりわけ自伝的な散文作品においては、ロマン派の作品は自伝的事実に戻づいて書かれている場合が多かったが、ランボーの散文作品では様々な文体が混在していて、複雑な様相を呈していることが明らかになった。また、ランボーとロマン派の比較研究がまだ不充分である為、シュザンヌ・ベルナールの比較研究を更に更新する必要性を感じた。最終年度は、まず2016年夏にロマン派に関する資料収集をパリ国立図書館等で行い、2017年3月にはパリ第4(ソルボンヌ)大学において行われた、ランボーの国際学会に出席し、世界中のランボー学者と意見交換をした。また、パリ・第4大学のミシェルミュラ教授と会合を持ち、今後の研究の発展性について話し合った。間もなく3年の研究を総括する論文を執筆する予定である。今後の研究の展開であるが、まず本年6月にはランボーの全集を編纂したアンドレ・ギュイヨー教授が日本に来られる予定なので、講演会を運営するなど、積極的に最新の研究を広く日本に紹介していきたい。次に、第2次ロマン派(ゴーチエやネルヴァル)やランボーと同時代の詩人などとランボーの詩学の比較を通して、より包括的に19世紀の近代抒情性について研究していきたい。
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