本研究を行った結果、第一次ロマン派(ユゴー・ラマルチーヌ・ミュッセ)の文学作品中に現れる「私」の特徴が明らかになり、また後の時代のランボーにおける主体性と深くかかわっていることが明らかになった。例えば、ミュッセの『世紀児の告白』とランボー『地獄の季節』は、記憶、夢、錯乱、狂気、主人公の多重人格性や内的葛藤という共通テーマを有しており、多くの類似点があることが明らかになった。ユゴー、ラマルチーヌの作品にもランボーにつながる抒情的主体性があり、近年研究の少なかった第一次ロマン派とランボーの関係性がより鮮明に明確になり、19世紀フランス文学における「主体」の意義が明らかになった。
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