最終年度に資料調査を纏めて国会国立図書館で3回、京都大学付属図書館で2回、筑波大学で1回調査を行いました。この六回の調査で収集した資料を基にして大惣本の仕入れ、所蔵、修復の慣行のみならず、大惣の広報活動や当時の本屋・貸本屋との関係についての考察を進めました。29年11月に国文学研究資料館の国際研究大会にて大惣と合巻の仕入れについて新しい研究成果を発表しました。翌年1月にJSA研究大会(於ハワイ)にて大惣と名古屋戯作の制作について発表し、同月に明星大学の研究大会にて大惣で流通した写本について発表しました。現在、出版決定の論文が一点、審査中の論文が一点ある現状です。合わせてここ四年間、若手B(貸本屋大惣と近世名古屋の読書文化史)の研究と関わる研究成果を国内・海外で様々な形で配信しており、全体的研究業績は学術誌・会議録の論文(6点)、国際研究大会の発表論文(7点)、招聘講演(5点)ということになります。また、著書の執筆が順調にすすみ、昨年の報告書で述べたように平成31年に成稿する予定になっています。
本研究は、約6000点の旧大惣本を調査し、蔵書についての精密詳細データを収集しました。調査の過程で得られた新見資料を基に下記のことが明らかになりました。1)営業期間中に少なくとも三種類の請求記号を用いること;2)部類によって営業本の仕立て方が異なること;3)合巻の場合は、特別な改装表紙を用い、毎年その表紙のデザインが変わること;4)表紙などの資料をもって仕入れの年度を推定できること;5)読者の書入れを基に、大惣本の享受態度や貸本屋に対する見方が明らかになる事となります。
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