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2015 年度 実施状況報告書

英語疑似空所化の史的発達についての生成統語論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 26770133
研究機関筑波大学

研究代表者

山村 崇斗  筑波大学, 人文社会系, 助教 (30706940)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード省略構文 / 生成統語論 / 動詞句省略 / 疑似空所化 / 英語史
研究実績の概要

平成27年度には、史的電子コーパスを用いた疑似空所化の調査を予定通り実施した。これまで限られた文献調査によって、古英語や中英語におけるPSGの存在は知られていたが、今回の史的電子コーパスとしては大規模なものを利用した調査を通じて得られた量的データによって、その存在だけでなく、どれくらいの頻度でPSGが用いられたかが分かった。この調査結果は「文法変化と言語理論」(開拓社)に掲載予定(平成28年9月発行予定)。
予定されていた現代英語PSGの調査の実施には至っていないが、PSGと多くの共通点を持つ動詞句省略(VPE)の研究には大きな進展が見られた。歴史的英語のVPEを生成文法理論で分析し、従来のように「助動詞は16世紀頃に語彙動詞から変化したもの」ではなく、「現在の助動詞は古英語から存在した」と主張し、英語助動詞の発達史に新たな視点が開かれた。この研究は、近代英語協会の学術雑誌「近代英語研究」 に論文として掲載される(平成28年6月発行予定) 。
その他の現象に視野を広げたところ、名詞句内省略構文の研究にも進展があった。主要部名詞のないthe poorが、「複数の人」を意味する名詞句として機能する。この構文は古英語では格形式にも制限がないが、中英語で属格形(eg. *the poor's)の生起例が著しく減少している。しかし、現代英語コーパスから、特定語彙で属格形がわずかに観察されてきている。この事実に、形容詞屈折の衰退で、属格形が可から不可に一度変化し、最近になって属格可に再度変化したと提案し、これを音形を持たない名詞から名詞化接辞への史的変化によって説明した。この調査研究の結果は平成27年7月にイタリア共和国で行われた22nd International Conference on Historical Linguisticsで、口頭発表により公表された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

歴史的英語におけるPSGの分布に関する史的電子コーパスを用いた調査は、順調に進められ、論文としてまとめられたが、現代英語に関する調査に進めていない。
PSGに限らず、その他の省略構文に多くの進展が見られ、それぞれ論文や海外学会の口頭発表によって成果をまとめることができた。それらの研究成果のPSG研究への理論的、経験的波及効果が見込まれている。

今後の研究の推進方策

史的電子コーパスを用いた古英語から後期近代英語におけるPSGの調査結果と、VPEの理論的研究から得られた英語助動詞の発達シナリオとを融合し、PSGの史的発達に理論的、経験的説明を与えるよう努める。予定されていた現代英語のPSGの調査は実施しない場合も考えられるが、これはこれまでの歴史的なPSGの調査結果や理論的研究から、必ずも当初想定した発達シナリオに沿うものとは限らない可能性が示唆されているため、もう一度、史的データを精査する必要があるからである。
あるいは、視野を名詞句内省略構文に広げ、名詞句内省略で主要部名詞のみを省略する、あたかも名詞句内の「疑似空所化」のように見える現象があるので、動詞句内や名詞句内にかかわらず、省略構文全体として史的データの整理と理論に基づく分析を行う可能性もある。

次年度使用額が生じた理由

当初予定していた文献複写が予想よりも少なかったため。

次年度使用額の使用計画

予定通りに図書費に充てる。最終年度に際して、研究成果をまとめるため、夏前までのパソコンの購入を検討している。本来であれば、初年度に購入する予定であったが、勤務校の耐震改修工事で新たに購入したパソコンでも使用できない場合を避けたり、海外学会のための高額な旅費に対応するために購入が遅れた経緯もある。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] 英語法助動詞の発達に関する動詞句省略の形態統語的分析からの一考察2016

    • 著者名/発表者名
      山村崇斗
    • 雑誌名

      近代英語研究

      巻: 32 ページ: 67-85

    • 査読あり
  • [学会発表] 英語史における形容詞の名詞的用法の発達2015

    • 著者名/発表者名
      山村崇斗
    • 学会等名
      「言語変化・変異研究ユニット」第2回ワークショップ 「コーパスからわかる言語の可変性と普遍性」
    • 発表場所
      東北大学青葉山キャンパス(宮城県仙台市)
    • 年月日
      2015-09-08 – 2015-09-09
  • [学会発表] An Emergence of a Novel Structure of “The + Adjective” Constructions in English2015

    • 著者名/発表者名
      Shuto, Yamamura
    • 学会等名
      22nd International Conference on Historical Linguistics
    • 発表場所
      Centro Congressi Federico II, Naple, Italy
    • 年月日
      2015-07-27 – 2015-07-31
    • 国際学会
  • [図書] コーパスからわかる言語変化・変異と言語理論2016

    • 著者名/発表者名
      小川芳樹・長野明子・菊池朗編 (山村崇斗著)
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      開拓社
  • [図書] 文法変化と言語理論2016

    • 著者名/発表者名
      田中智之・中川直志・久米祐介・山村崇斗編(山村崇斗著)
    • 総ページ数
      印刷中
    • 出版者
      開拓社

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公開日: 2017-01-06  

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