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2015 年度 実施状況報告書

日本語文処理における眼球運動計測を用いた実験手法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 26770134
研究機関成城大学

研究代表者

新井 学  成城大学, 経済学部, 専任講師 (20568860)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード眼球運動 / 言語理解 / 関係節文 / 構造的曖昧性 / 構造的予測
研究実績の概要

本研究の目的は眼球運動測定という実験手法を用いて実時間上の日本語文理解プロセスを研究し、英語文理解の処理と比較検討することにより、言語構造・文字の特性に基づく文処理方略の違いを明らかにすることである。本年度の研究実績を以下にまとめる。
1. 初年度(平成26年度)に行った日本語関係節文理解に関する眼球運動測定実験の結果分析得られた知見をもとに研究成果を言語科学会第18回国際年次大会(JSLS2016)に投稿し、口頭発表(2016年度6月発表予定)として採択された。
2. この研究プロジェクトの主な目標の一つとして眼球運動観測を使った言語研究の手法の体系化がある。本年度は自身が今まで行ってきた眼球運動測定研究をまとめて、そのデータの解析手法について2015年9月に国立国語研究所にて行われたシンポジウム「統計的言語研究の現在」にて講演し、その後この発表内容を元に論文を執筆し、統計数理研究所が発行する査読付き学術雑誌『統計数理』に投稿した(現在査読審査中)。
3. この研究プロジェクトの理論的骨組みである予測に基づく文処理モデル(Levy, 2006; Hale, 2001)の日本語理解における有効性を実証した眼球運動測定実験の結果を2015年6月に行われた言語科学会第17回国際年次大会(JSLS2015)で口頭発表した。現在この研究結果をまとめた論文を執筆中である。
4. Digging-in効果と呼ばれる構造的曖昧性をもつ関係節の長さによる処理コストが、頻度情報に基づく予測に起因するか、あるいは構造分析における統語的結びつきの時間的変化によるのか検討した眼球運動測定実験の結果を報告した論文を執筆・投稿し、国際学術雑誌PLOS ONEに投稿し、アクセプトされた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度は『研究実績の概要』欄の(1)(3)に記述した通り予測に基づく文処理モデルの実証とともに処理負荷に貢献する新しい要因を確認することができた。特に(1)の主語・目的語関係節文における処理コストのアシメトリーに関する研究により、日本語において主語関係節の方が目的語関係節に比べて処理が楽である理由として、文頭に目的格が来る場合、その後に直接動詞が続く可能性が高いため動詞を予測し、実際に動詞を見た時点で続いて関係節主部の予測を行っていることを明らかにした。これは修飾句が主部より先にくる動詞末位型言語特有の現象であり日本語と英語の文処理方略の違いを明らかにする重要な結果である。この研究結果は2016年6月に東京大学で行われる言語科学会第18回国際年次大会(JSLS2016)にて口頭発表予定であり、その後この研究結果をまとめた論文の執筆に取りかかる。また(4)の研究では予測に基づく文処理モデルでは説明ができない文処理過程を明らかにした点で貴重であり、最終年度に後続実験を行うことで、構造の違いによる処理方略の違いについて精査する予定である。また(2)では日本語研究において未だ確立されていない眼球運動測定データの分析方法について今現在最も妥当だと考えられる最新の解析方法をまとめ論文にまとめた(現在査読審査中)。

今後の研究の推進方策

平成28年度前期には、以下の3つの点を中心に本プロジェクトの総括をおこなう(以下の番号は『研究実績の概要』の番号と対応している)。
1. 主語・目的語関係節文の処理コストのアシメトリーに関して最終実験を行う。その結果を含めて(結果によっては別々に)論文にまとめ国際学術雑誌に投稿する。同時に国内外の学会発表も積極的に行う。
2.分析手法をまとめた論文の査読結果に対して修正を行い再投稿し、2016年度中に出版されることを目標とする。
3. 「予測に基づく文処理モデル」の日本語理解における有効性を実証した眼球運動測定実験の結果をまとめた論文を執筆し、2016年度中に国際学術雑誌に投稿する。この際ノーミング実験や、コーパス調査、特に英語文理解における眼球運動コーパス(Dundee Corpus)を使った追加調査が必要となる可能性が高く、これらを平行して行う。

次年度使用額が生じた理由

2015年9月より成城大学へと所属先が変わったことにより研究環境・設備を整える為に時間を要し、平成27年度に計画していた眼球運動測定の追加実験を遂行することが出来なかった。又2016年3月にフロリダで行われた国際学会CUNY conference 2016に参加予定であったが大学の入試業務の関係で参加することを取りやめた。

次年度使用額の使用計画

上記の理由により、平成28年度に眼球運動測定の追加実験を行うための実験補助者・実験被験者への謝金と、2016年9月にスペイン・ビルバオで行われる国際学会AMLaP 2016への参加費・旅費を予定している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 言語理解研究における眼球運動データ及び読み時間データの統計分析2016

    • 著者名/発表者名
      新井学, Douglas Roland
    • 雑誌名

      統計数理

      巻: 16 ページ: 未定

    • 査読あり
  • [雑誌論文] It's harder to break a relationship when you commit long2016

    • 著者名/発表者名
      Manabu Arai, Chie Nakamura
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 眼球運動測定による注視時間データと反応時間としての読み時間データの分析2015

    • 著者名/発表者名
      新井学
    • 学会等名
      コーパス日本語学ワークショップ・サテライトシンポジウム「統計的言語研究の現在」
    • 発表場所
      国立国語研究所
    • 年月日
      2015-09-04
  • [学会発表] Processing Japanese sentences as a zero-sum game2015

    • 著者名/発表者名
      Uchida. S., Arai, M., Miyamoto, E. T., & Hirose, Y.
    • 学会等名
      The 17th Annual International Conference of the Japanese Society for Language Sciences
    • 発表場所
      別府国際コンベンションセンター
    • 年月日
      2015-07-18 – 2015-07-19
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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