本研究課題の最終年度の研究実績を以下にまとめる。 1.「予測に基づく文処理モデル」の動詞末位型言語における妥当性を検証するため日本語関係節文の理解について眼球運動測定を用いた追加実験(第3実験)を行った。この研究成果は言語科学会第19回国際年次大会(JSLS2017)に投稿し、口頭発表(2017年7月発表予定)で採択された。 2. 1の追加実験の結果と、初年度に行った眼球運動測定実験の結果に一貫性がみられ、日本語理解における新しい知見(特に主語関係節の処理容易さを作業記憶の負荷ではなく頻度情報に基づく言語情報の予測によって説明できること)が得られた。現在この研究成果をまとめた論文を執筆しており、今年の夏頃に言語心理学の分野で最も権威ある国際学術雑誌の一つであるJournal of Memory and Languageに投稿する予定である。 3.本研究課題である眼球運動測定を用いた言語研究手法の体系化のため、昨年統計数理研究所が発行する『統計数理』に学術論文「言語理解研究における眼球運動データ及び読み時間データの統計分析」(Douglas Roland博士との共著)を投稿し、無事採択され、2016年12月に出版された。最終年度は査読者から頂いた多くの有益なコメントをもとに論文に大幅な修正を加えた。その結果、眼球運動測定研究を行う際の適切な実験デザインから、データ分析まで包括的かつ詳細に議論し、これから眼球運動測定研究を始めたいと考える学生から、大量の量的データを分析するための適切な統計手法を知りたいと考える研究者まで幅広く読んでもらえる論文となった。 4. 2015年3月にアメリカの主要学会(CUNY 2015)にて口頭発表した予測に基づく文処理モデルの日本語理解における有効性を検証した実験結果をまとめた論文を現在執筆中であり、今年の秋頃に国際学術雑誌に投稿する予定である。
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