研究課題/領域番号 |
26770142
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
難波 彩子 岡山大学, 全学教育・学生支援機構, 准教授 (00638760)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リスナーシップ / ジェンダー / 異文化 / 若い世代 / 社会言語学 / 談話分析 / 聞き手の関与 / 場の理論 |
研究実績の概要 |
平成28年度は(1)データ収集の継続、(2)既存の若い世代の会話データの分析、(3)論文執筆の3つの研究活動中心に行った。(1)本研究のキーワードのうちの一つである「異文化」に関するデータ収集を継続的に行った。前年度にすでにインタビューをした4名の学生が長期海外留学を終えて帰国したため、当該学生に対する留学後のインタビューを行った。また、平成28年度9月から留学予定の学生4名へのインタビューを行った。(2)前年度から行っている、平成26年度に収集した若い世代の会話データの分析に引き続き従事した。分析は、(i)聞き手による会話への積極的な関与や、(ii)場の言語学の視点からみた聞き手の同調現象、(iii)「コンテクスト化の合図」による聞き手行動とジェンダー、の3点について行った。(3)今年度は研究代表者の妊娠で安静にする必要があったため、国内外の学会における研究発表は控えた。代わりに論文執筆に焦点をあてて活動し、論文3本を公表し(『コミュニケーションを枠づける―参与・関与の不均衡と多様性』(編者:片岡邦好、池田佳子、秦かおり、難波彩子担当:「日本語会話における聞き手のフッティングと積極的な関与」、日本語用論学会第18回大会発表論文集、Papers on and around the Linguistics of “BA” 2017)、論文2本については現在編集中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の主な研究実施計画であった「異文化」に関するデータ収集を継続的に行っている。その結果、前年度留学した学生4名、そして今年度新たに留学予定の学生4名にインタビュー調査を行うことができた。また、既存の若い世代の会話データについて、聞き手による会話への積極的な関与について、参与枠組み(Goffman 1981)の視点から分析を行った。また、場の理論(清水2004、井出2016)の視点を取り入れ、聞き手の同調現象について分析を深めた。さらに、前年度共催した聞き手行動のラウンドテーブルで発表した、ジェンダーと聞き手行動の関連性についての研究も深めることができた。これらの研究成果として、聞き手の積極的な関与についての論文は出版された(『コミュニケーションを枠づける―参与・関与の不均衡と多様性』(編者:片岡邦好、池田佳子、秦かおり、難波彩子担当:「日本語会話における聞き手のフッティングと積極的な関与」)。また、前年度に発表した語用論学会でのワークショップの研究についての論文が公表された(日本語用論学会第18回大会発表論文集)。さらに、2011年12月に開催された場の理論との関係を探る研究会(早稲田大学)で発表した研究内容が論文で公表された(Papers on and around the Linguistics of “BA” 2017)。平成28年度から現在にかけて編集中の論文については、場の理論から分析を行った聞き手の同調現象に関する研究(論文仮タイトル「同調から広がる会話の一体感―場の理論による試み」)と、前年度に語用論学会で主催したワークショップの研究(「リスナーシップとアイデンティティ―ジェンダーと異文化の視点」)がある。
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今後の研究の推進方策 |
現在編集中の論文2本について編集を重ね、出版する予定である。また、聞き手行動についての英語論文を国内外のジャーナルに投稿することも考えている。その他、前年度から開始している「異文化」に関するデータ収集も継続的に収集していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の妊娠と出産で研究の中断をしている。新たに収集したデータや既存のデータの書起こしを完了する必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
主に、収集したデータの書起こし作業で使用する予定である。
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