研究課題/領域番号 |
26770143
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
五十嵐 陽介 広島大学, 文学研究科, 准教授 (00549008)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | アクセント / 歴史言語学 / 九州方言 / 系統論 / 西南部九州二型式 / 豊前式 / 筑前式 |
研究実績の概要 |
大分県南部の5集落(蒲江、野津、犬飼、緒方、宇目)および大分県日田市でアクセント調査を行った(被験者11名)。「豊前式」体系を有するとされる大分県南部の集落のアクセント体系は均一性が高く、その広範囲な地理的分布にも関わらず、先行研究に記述された(北部を含めた)大分県の豊前式方言(杵築など)の体系と、顕著な差異が観察されないことが確認された。 大分県日田市の方言は、福岡県福岡市などとともに「筑前式」の体系を有するとされるが、そのような先行研究の記述が妥当であることが確認された。 佐賀県の旧杵島郡の6集落(北方、大町、江北、錦江、朝日、橘)、および旧藤津郡の1集落(嬉野)でアクセント調査を行った(被験者14名)。この地域の方言は、鹿児島県や長崎県の南部、熊本県の西部と同様に「九州西南部二型式」体系を有するとされる。調査の結果、佐賀県杵島郡の諸方言において、金田一の「3拍名詞第5類・第6類・第7類」に興味深い対応が観察されることを発見した。当該の対応は鹿児島県の諸方言には観察されない。この先行研究において報告されていない事実は、平子達也氏との連名で日本言語学会の口頭発表の形で公表した。 熊本県玉名市でアクセント調査を行った(被験者4名)。この方言も九州西南部二型式体系を持つとされるが、調査の結果、3拍名詞第5類に佐賀県旧杵島郡の諸方言と同様の対応が観察されることが明らかになった。これは、佐賀県南部の方言と熊本県北部の方言の系統的な近さを示唆する事実である。 大分県杵築方言におけるアクセント体系の歴史的考察に関して平子達也氏と、熊本県天草の諸方言のアクセント体系の歴史的考察に関して松浦年男氏と連名で、研究論文を発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
佐賀県を中心として九州西南部二型アクセント体系を有する方言のアクセント調査を行った結果、佐賀県杵島郡の諸方言において、金田一の「3拍名詞第5類(および第6類・第7類)」に興味深い対応が観察されることを発見した。この事実は、西南部九州二型アクセント諸方言の共通祖語におけるアクセント型の対立数が3を超えていたことを示唆する事実であり、今後のアクセントの歴史研究に重要な示唆を与えるものである。
|
今後の研究の推進方策 |
26年度は、佐賀県と大分県の諸方言のアクセント体系を中心に調査した。27年度は長崎や島原の諸方言のアクセントを中心に調査する予定である。また、26年度までに十分に調査することができなかった、形態論における改新に関する調査も行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ある地域の現地調査を年度末に予定していたが、現地との連絡が不通になったため当該の調査が中止となったのが主な理由である。
|
次年度使用額の使用計画 |
九州方言の現地調査を引き続き行うが、研究代表者の所属が広島県から東京都に移ったため、より多くの交通費が必要とされる。次年度使用額はそれに充てられる予定である。
|