研究課題/領域番号 |
26770144
|
研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
児倉 徳和 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教 (70597757)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | シベ語 / ツングース諸語 / 意図 / 知識 / 補助動詞 |
研究実績の概要 |
(1)調査:新疆ウイグル自治区でのシベ語の現地調査を行った。本研究課題の主要なテーマである、意図に関わる補助動詞 aci-, dudu-, seNda- についての調査を行うと共に、文末詞 lyangge', dalye' に関する調査を行い、シベ語の文法形式と意図とのかかわりについてより体系的なデータを得た。また、これまでに採録済みの談話資料の書き起こしとコーディングを母語話者の協力を得ながらすすめた。また、日本国内にてウイグル語の調査も行い、シベ語との対照の観点から、補助動詞、テンス・アスペクト標識、文末詞についてより体系的なデータを得た。 (2)分析:これまでの調査結果から明らかになっていた、非現実の標識-reと記憶領域のモデルにおいて「知識の読み出し」を表すとされる小辞=nggeの組み合わせの制約と、意図にかかわる補助動詞の機能から、シベ語の諸文法形式からみた意図の性質についてより体系的な分析を行った。 (3)研究成果の発表:本研究課題の基盤となる記憶領域のモデルと、モデルに基づく小辞=nggeの機能的特徴の分析について、2015年8月に中国・ハイラルにおいて口頭発表を行った。シベ語の補助動詞 bi-, o-, yela- の機能ををより通言語的な枠組みである証拠性の枠組みに沿って分析行い、2016年3月にストックホルムで口頭発表を行った。シベ語における通時的な形態論的変化について2015年7月にソウルで口頭発表を行った。また、シベ語における意図と知識の関係の文法形式の機能への現れについて2016年京都で口頭発表を行った。また、本研究課題の基盤となる記憶領域のモデルに基づいたシベ語における知識の照合を表す補助動詞の一形式 biXe について論文の形で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)当初の計画通りにシベ語の現地調査を行うことができ、また国内においても当初の計画以上のシベ語母語話者の協力を得られる体制ができつつあり、今後の安定的な調査に向けた基盤形成が進んでいる。 (2)当初の計画にはなかった、文末詞 lyangge', dalye'の分析、シベ語の文法体系の通時的な形成の考察を含め、記憶領域のモデルによる分析の体系化が進んだ。 (3)ウイグル語等他の言語との比較対照を通して本記憶領域のモデルの有効性を確認することができた。 (4)本研究課題において当初分析対象としていた補助動詞 aci-, dudu-, seNda- についても分析が進み、ヴォイスに関わる動詞接辞 we- についても談話資料・作例資料含め分析のデータが揃いつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目の研究活動により、調査研究のための基盤がある程度整ったと考えられるため、最終年度はより論文の形での研究成果の公開に重点をおきつつ、また今後の発展的研究も視野に入れながら、調査研究体制の構築と資料の蓄積を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の繰越額が多額であったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度行う成果発表・現地調査の計画から、旅費の執行額がふえ、当初予定通りの額が執行される見込みである。
|