最終年度となる平成28年度は、1) 中期モンゴル語と現在の北方モンゴル系言語における文末形式の分布と用法についての比較対照研究、2) シネヘン・ブリヤート語テキストの整理と分析をおこなった。以下、それぞれの概要を記す。 1) 中期モンゴル語と現在の北方モンゴル系言語における文末形式の分布と用法についての比較対照研究:中期モンゴル語で記されたいわゆる『元朝秘史』テキストにおける文末での動詞屈折形式の出現分布に着目し、その機能と形式の関連について分析した。この成果は韓国アルタイ学会が刊行する学会誌Altai Hakpoにて公刊した。そのデータとシネヘン・ブリヤート語の文末形式、とくに人称標示形式のふるまいについて昨年度分析した結果とを比較対照し、a) 中期モンゴル語の動詞屈折形式の分布と、シネヘン・ブリヤート語における文末の人称標示形式の分布とが類似していること、b) 中期モンゴル語、シネヘン・ブリヤート語ともにモダリティと文末形式が密接に連関していること、c) またこれがユーラシアにおけるさまざまな言語に見られる名詞化・脱従属化の類型にあてはまることを指摘し、その成果を公刊した。 2) シネヘン・ブリヤート語テキストの整理と分析:すでに採録済みの民話テキストに文法情報を付し、公開可能な形に整えた。成果は2017年度中に公刊する予定である。秋季におこなった現地調査では、この採録済みテキストの分析に関するチェック作業を、母語話者の協力を得ながら進めた。これと並行して、公刊済み/未公刊の資料ともにフォーマットを統一し、形態分析ソフトによる検索を可能とした。
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