最終年度では、これまでの実験を元に多くの論文を出版・発表・執筆した。本プロジェクトでは、「どのような実験が音韻知識の解明に有効か」という言語学における方法論の問題を、多くの音韻現象を通して研究してきた。扱った現象は、促音の無声化現象、連濁、音象徴、グループ名付けパターンなどである。これらの現象を、二者択一法やLikert scaleなどで比較し、結果を論文にまとめ、出版した。また、国内の発表会や国際会議で積極的に発表を行なった。
特に、音象徴の研究は特に発展を見せ、ポケモンのキャラクターの名前をもとにコーパス分析、実験を行い、論文を2本執筆し、国際雑誌に投稿した。この研究は言語学の研究としての意義はもちろん、今後教材として有用だと思われ、言語学の裾野を広げることに役立つであろう。さらに、このポケモンの研究は海外研究者たちの目にもとまり、国際的な共同研究が始まった。音象徴に関しては言語学の入門としてはとっつきやすいということが判明し、この点を利用した言語学入門の新しい教科書の執筆も始めることができた。
また、昨年度からオフラインタスクでは音韻知識の解明には限界があることが判明し、Electromagnetic Articulograph (EMA)やElectro Palatography (EPG)などを使った音声実験も積極的に取り入れて実験を行ない始めた。結果、母音の無声化や促音の調音の詳細などがより明確化になり、日本語の音韻体系に関しても重要な示唆が得られる見込みである。
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