報告者は過去3年間にわたり、本研究費のもとに、言語学の中でも統語論・語彙意味論の観点から、多言語における2次述語を研究した。対象言語は英語、日本語に始まり、北京語、モンゴル語、朝鮮語である。本年度はその最終年であり、研究を継続的に行うと共に、これまでの研究結果をまとめるという作業を行なった。 研究実績としては論文1点、著書1点の刊行に至った。論文は日本語における「~ながら・~ないで」という表現の分析であり、これは、これらの接続表現が2つのイベントを同時あるいは連続的に順番に繋ぐものであるところから、意味的に描写構文や結果構文に近く、それでいて統語的には全くことなる構造をしているところに着目するところから研究が始まった。また3年間の研究をまとめる作業としては、各言語における2次述語を、それぞれの言語の特性をみながら分析し、その結果を比較検討するという手法をとった。 理論的には、それぞれの2次述語の節としてのサイズをテストを通して判別し、時制表現の有無と2次述語で描くイベントの発生時の関係を、統語論の観点から捉えた。5言語全てを研究したが、中でもモンゴル語、日本語、英語の分析では一定の結果を残したが、それら以外の言語では問題点も残した。また北京語では新たなテーマとして主語の位置に関するデータが集まり、今後の取り組むべき新たな研究課題が見つかるという結果になった。 総じて、理論的にも、各言語の一事象を分析するだけでなく、理論のあり方にも言及し、一定のインパクトも残せたと考えている。
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