研究実績の概要 |
平成28年度はこれまでに得られていたデータをまとめる形で国際雑誌への論文を執筆、投稿することができた。また、その成果の一部はスペインで開催された国際学会、東北大学小川芳樹教授主催の研究会およびオーストラリア, Monash Universityでの招聘講演において公表することができた。 前年度は社会言語学的視点に基づいて当該現象における言語変化に関する分析を進めていたが、28年度は統計解析を活用して他言語に見られる言語変化との比較を行うことで言語の普遍的特性についての仮説検証を進めた。具体的には、「現代日本語書き言葉均衡コーパス」および大正・昭和前期の発話データ「岡田コレクション」より抽出したデータを用いて、ロジスティック混合効果モデルといった統計解析を行い、言語変化の可視化を行うことができた。さらに、英語などで提唱されている言語変化モデルに日本語のデータが従うことが確認され、普遍的な言語変化の特性の解明に貢献することができた。この成果の一部は国際学会(Sociolinguistic Symposium 21, スペイン開催)で発表するとともに、これまでの成果をまとめる形で国際研究雑誌に論文を投稿済みである。 また、当該現象の認知的側面に関しては、前年度は主語と述部の隣接性は言語の認知処理に原因があるという仮説を検証する形で実験を行った。28年度も引き続き甲南大学中谷健太郎教授と追加実験を行い、新たなデータを加える形で分析を進めた。その結果は、これまでの成果とともに国際研究雑誌に論文を投稿すべく現在執筆中である。また、研究課題に沿った形で、国立障害者リハビリテーションセンター研究所・高次脳機能障害研究室との共同研究として、言語変異の理解を深めるため、fMRIを用いた脳機能研究および失語症者研究を開始した。
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