近世国語辞書の語釈が形成されていく過程について、『倭訓栞』を中心に収録語彙の位相や典拠との関連性から分析を行った。その結果、『倭訓栞』は稿が進む中で「国語辞書を編纂する」という意識が高まり、より広汎な語彙の拡大が行われるとともに、客観的かつ多角的に語義を解釈していくという記述スタイルが出来上がっていくことが分かった。また『倭訓栞』では、用例を意識的に配置することで「読ませるための辞書」という側面が意識されていくことも判明した。さらに、従来研究が進んでいなかった「組み合わせ本」(取り合わせ本)『倭訓栞』について、編纂過程解明の大きなカギを握っていることを多様な側面から考察することが出来た。
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