研究課題/領域番号 |
26770163
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
勝又 隆 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (60587640)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 形式名詞 / 係り結び / 連体形 / 構文構造 |
研究実績の概要 |
口頭発表「On the position of the Old Japanese kakari particle so and the focus expressed by the clause(上代における係助詞ソの出現位置と文の焦点について)」(国際ワークショップ「比較的観点から見た係り結び」,国立国語研究所,平成27年9月5日~6日)において、ソによる係り結び構文の語順に関わる傾向についてまとめるとともに、文の焦点が必ずしもソの直上の語句には無いことを述べた。 口頭発表「上代における「―ソ―連体形」文の連接関係に見られる特徴について」(第262回 筑紫日本語研究会,九州大学,平成27年10月17日)において、ソによる係り結び構文について、連接関係の面から考察した。『万葉集』における「―ソ―連体形」文が後続文を伴う例は、398例中68例である。その連接関係について調査した結果、「―ソ―連体形」文が後続文の前提や根拠となっていることを述べ、原則として後続文の存在を含意するものである可能性を指摘した。その後の研究の進展により、この連接関係においては主語が異なることが大半で、それ以外の場合は後続文には推測を表す文が現れているものがほとんどであることがわかった。 口頭発表「古代日本語における「連体形+モノ/コト」節について」(名古屋言語研究会例会(第140回),名古屋大学,平成27年12月19日)において、「連体形+コト/モノ」節、特にコト節が述部に現れる例について考察し、上代にはコト節が述部に現れる例が少ないが、中古では珍しくないという平成26年度の成果に基づき、中古のコト節は、推量判断実践文や従属節(原因理由文)、疑問詞疑問文に現れるという点で、現代語のノダ文には見られるが、中古の連体ナリ文には見られない用法の一部をコトナリ/ゾ文が担っていた可能性が高いことを指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは若干異なる調査・考察を実施したが、3年間の研究計画全体を考えた場合、確認しておくべきことを確認したという点で、概ね順調に進展していると判断した。 具体的には、当初より係り結び構文について調査を行うことは平成27年度の計画に入っていたが、上代よりも中古を中心に扱う予定であった。実際には、中古の調査に入る前に上代の用例を確認し直した結果、連接関係や文の焦点の扱いについて、十分に明らかになっていないことがわかったため、そちらを調査・考察した。なお、係り結び構文を扱うのは、平成26年度に連体ナリ文とモノナリ文の構造的差異を明らかにしたのと同様、形式名詞述語文と構造的に類似している構文との差異を明らかにするためである。 形式名詞の分布に関しては、上代にはモノ以外は述部に現れにくいことが平成26年度の成果によってわかっていたため、予定どおり中古を中心に調査・考察を行った。連体ナリ文・モノナリ文・コトナリ文(コトゾ文)の関係について見通しを立てることができたため、順調と言える。 中古の連体ゾ文についても調査する予定であったが、こちらは実施できなかった。コトナリ文の調査が単なる調査で終わらず、他の構文との関係や中世以降の変遷も踏まえた考察へとつながったため、こちらは平成28年度に持ち越すこととした。 国際ワークショップへの招待や、日本語学会の大会運営委員に指名された影響で、当初予定していた学会発表ができなかったが、それについては整理し直して平成28年度に実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本研究課題の最終年度にあたるため、論文や学会発表という具体的な形での成果の公開を行う予定である。 具体的に調査・考察する内容としては、まず、平成27年度の成果を踏まえ、係り結び構文・モノナリ文・モノゾ文・コトナリ文・コトゾ文・連体ナリ文・連体ゾ文について、それぞれの構文の文法的な特徴について、互いの相違点と共通点を整理する。また、連接関係に注目し、それぞれの構文の文章・談話構成における特性や役割についても相違点と共通点を整理する。この整理を上代と中古、それぞれにおいて行うことで、両時代の比較を行う。それによって、上代と中古において形式名詞述語文および類似の各構文がそれぞれ各時代の述語体系にどのように位置づけられるのかを示した上で、上代から中古にかけてどのように変化したのかを記述する。 また、予定よりも順調に進展した場合は、本研究課題終了後のさらなる展望を得られるよう、一部の構文については中世以降についても変遷過程を調査し、記述する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、学会発表を行う予定であったが、発表を計画していた日本語学会の大会企画運営委員に指名されたため、当該学会での発表を延期した。また、9月に発表した国際ワークショップは招待発表であり旅費が支給されたため、科研費からの支出を要しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、平成27年度と同様の研究会での発表に加え、学会での発表や情報収集などを実施する計画でいるため、次年度使用額については、主としてそれらの旅費として使用する計画である。
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