研究課題/領域番号 |
26770164
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
劉 志偉 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (00605173)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テニヲハ論 / 有賀長伯 / 春樹顕秘増抄 / 和歌八重垣 |
研究実績の概要 |
当初の計画通りに、『和歌八重垣』と『春樹顕秘増抄』を中心に、中世のテニヲハ論書を代表する「姉小路式」系列諸書の項目関係の一覧を作成した。現在は項目立てと具体的な記述の比較作業をすすめている。論文の執筆作業も同時に進行中である。 一方、旧派のテニヲハ論はいわば当時日本人が邦人に対する詠歌指導過程に見られる文法意識であるが、現代における外国人を対象とする日本語教育を指導する際のそれに相通ずるものもある。筆者はこうした意識の表れを現代語日本語教育にも応用できるものと考え、筆者は「筒(つつ)の項目」を例に、通時論を部分的に取り入れた文語文法の指導について私案を発表した。例えば、共通している点については以下の点が挙げられる。 「筒(つつ)」は、和歌作法上において、注目されてきたテニヲハ項目のひとつである。最初のテニヲハ論書とされる『手爾葉大概抄』 では「筒(つつ)」について次のような記述がある。「筒留程経之心、又非二事相并之詠歌不留也、中筒々茂其心等矣」(根来1979:26-27)。「程経(ほどふる)」は、同時を表す「つつ」である。「非二事相并(ふたことあいならばず)」は、逆接の「つつ」を指している。「中筒々茂」は、「なかつつ・つつも」なのか「なかつつも」なのかについて議論の必要があるが、「つつも」について言及されている点は動かない。これらの記述を現代日本語教育で用いられる文型辞典グループ・ジャマシイ(1998:230-231)による「~つつ」において説く項目と照らし合わせると、「R-つつある」を除いた「R-つつ(同時)」「R-つつ(逆接)」「R-つつも」の3つの見出し項目の立て方が全く同じであることがわかる。 このように、広義の文法指導からテニヲハ意識を外国人ならではの視点から捉えることは、今後の海外文芸との比較のみならず、言語研究にも寄与できるものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は概ね当初提出した研究計画書の通り、校勘作業及びテニヲハ諸書における項目の増減の調査研究を進めてきた。
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今後の研究の推進方策 |
『春樹顕秘増抄』と「和歌八重垣」における項目の増減関係を中心に、中世テニヲハ論を代表する『手爾葉大概抄』と「姉小路式」との2つの系統を視野に入れて有賀長伯のテニヲハ論について考察を行う。さらに、その流れの中において、『春樹顕秘抄』と『春樹顕秘増抄』の増補姿勢の異同を明らかにし、論文をまとめてゆく。 また、旧派テニヲハ論書において重要な術語とされる「五音」に注目し、日本語の特質の一つとして取りあげ、国際学会で口頭発表を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究活動において必要な参考書籍の購入すること、学会発表等に伴う出張費用を支出することの2点による。
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次年度使用額の使用計画 |
『春樹顕秘増抄』と「和歌八重垣」における項目の増減関係を中心に、中世テニヲハ論を代表する『手爾葉大概抄』と「姉小路式」との2つの系統を視野に入れて有賀長伯のテニヲハ論について考察を行う。さらに、その流れの中において、『春樹顕秘抄』と『春樹顕秘増抄』の増補姿勢の異同を明らかにし、論文をまとめてゆく。研究活動にあたって次年度も参考書籍及び備品を購入する予定である。 また、旧派テニヲハ論書において重要な術語とされる「五音」に注目し、日本語の特質の一つとして取りあげ、国際学会で口頭発表を予定している。この出張に伴う諸費用を支出する予定である。
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