研究課題/領域番号 |
26770166
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
宮内 佐夜香 中京大学, 文学部, 准教授 (30508502)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 逆接条件表現 / 接続詞 / 接続助詞 / 近代日本語 |
研究実績の概要 |
江戸語・東京語資料について逆接の接続詞的形式「ソレダガ」「ソウダケレド」「ダケド」等の調査を実施し、用例の採取と機能の分析を行った。その結果、近世後期から明治前期にかけての形式の推移が明らかになった。また、それぞれの接続詞のもつ機能は、構成要素となっている逆接の接続助詞の機能と明らかに連動しており、接続詞としての特殊な機能はほぼ観察されないことが確認された。また、構成要素に「ソレ」や「ソウ」等の指示詞を含む場合の機能の差について言及し、その機能の違いから「ソウ」系の接続詞で特に指示詞の脱落が起こり、「ソレ」系は残存した、という見解を導き出した。以上の研究成果について、中部日本・日本語学研究会(第67回)(於刈谷市総合文化センター、2014年4月26日)において発表し、多くの意見を得た。さらに、江戸語資料調査の信頼性を高めるために、一次資料の所在を調査し、複写の収集を行った。 江戸語・東京語と比較対照し、近世以降の全体像を追究するために、上方語においても同様の調査を開始した。逆接接続詞の発達を解明するためには、大前提となる逆接条件表現の様相を把握する必要がある。そこで平成26年度はまず、江戸語と時代を同じくする近世後期上方語の逆接の接続助詞について分析し、すでに分析を終えている江戸語の接続助詞との対照を行った。その結果、江戸語では「ガ」中心で上方語では「ドモ」「ケレドモ」中心であるなど、それぞれの独自の特徴が明らかになると同時に、「ケレドモ」の増加時期が合致したり、使用者の属性が合致するといった、共通の現象についても明らかとなった。この研究成果は『中京大学文学会論叢』第1号(2015年3月発行)において、論文として発表した。 これに引き続き、これまで調査されてこなかった近世前期上方語の逆接表現についての追究を行うために、調査資料の選定、収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、第一に実施予定であった江戸語・東京語の逆接接続詞についての調査研究を進め、成果発表も順調に行った。ただし、研究を進めていくうちに、江戸語・東京語について追究するためには、やはり時代的に先行する上方語の詳細な実態を把握した上で分析を進めていく必要があると強く感じた。そのため、当初予定していた幕末の江戸語調査拡充よりも、上方語の調査を優先して行うこととした。このことにより、江戸語・東京語の調査研究については達成されていない内容があるが、その替わりに本年度実施予定であった上方語の調査研究とその一部の成果発表を前倒しにして行った。 以上のように、実施する調査の順序を変更した点はあるが、計画全体の進行としてはおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は平成26年度下半期に行った上方語の調査研究を継続し、近世前期上方語を対象とした調査を実施する。そのために、上方語調査のための資料収集を優先的に行う。上半期中に調査を進め、下半期にはその研究成果を学会等で発表する予定である。また、下半期には、昨年度上方語調査を優先したために実施できなかった江戸語調査の拡充を実施し、昨年度に中部日本・日本語学研究会において発表した成果に加えて、さらに考察を進展させる予定である。これにより、当初の2年度分の計画が、予定通り達成されることになる。 平成28年度には当初の計画に従って、上方語について明治期の調査研究を行うことを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
江戸語の調査拡充の一部を後回しにし、上方語調査の前倒ししたために、上方語調査用の総索引を購入するための準備を行ったが、一式の費用が残額では不足していた。また、調査出張費としての執行も計画したが、校務の都合によりかなわなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度支給される費用と合わせて、調査資料の購入に当てる。
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