研究課題/領域番号 |
26770166
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
宮内 佐夜香 中京大学, 文学部, 准教授 (30508502)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本語史 / 条件表現 / 逆接 |
研究実績の概要 |
平成27年度に行った近世前期上方語の逆接条件表現の実態についての成果発表論文が論文集に掲載された(『日本語文法史研究3』ひつじ書房2016.12刊)。内容は、逆接条件表現における、近世前期の「ドモ」と「ガ」の使用実態を、接続助詞「ガ」全体の動きを視野に入れて精査したものである。その結果から、順接条件表現や逆接仮定条件表現が中世後期には従来の形式から新形式へ移行を始める中で、逆接確定条件のみやや遅れて移行したという、当該の表現カテゴリー(条件表現)のうち逆接確定条件の変化に特異な点が見られることを指摘した。 さらに近世上方語の実態を精査するために、その後の時代にあたる近世中期の資料を対象に、用例調査を進めた。近松門左衛門等の浄瑠璃台本、歌舞伎台帳が資料としてあげられる。近松浄瑠璃については、人間文化研究機構国立国語研究所が開発中の歴史コーパスの中に収録される予定であるが、平成28年度より当該のコーパスプロジェクトの研究協力者となったことにより、最新のデータベースを利用できるようになった。また、本研究課題では幕末から明治初期の調査も対象となっているが、平成28年度には新たに近代の落語レコードの書き起こし資料に触れる機会を得た。研究期間の途中に、このような新たな言語資源開発の進捗があったため、これらを利用することが本研究課題にとって有益なことであると考えた。そのため、その新たなデータベース等の利用を開始し、それに基づく調査分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
全体に若干の遅れを生じている。大きな要因として、当初計画時に想定し得なかった学内外の業務の多忙化が発生し、十分に研究計画が遂行できなかったことがある。そのため各種の作業に遅れが生じて、補助事業期間の延長を申請し、平成29年度も引き続き本研究課題を進めていくこととなった。また、本研究課題に関連する新たな言語資源の開発という、当初計画に無かった進捗がさらに生じた。新たな資料の利用が研究手法上有益なことであったため、それらを活用すべく準備を行い、実際の利用を開始したことも、計画がやや遅れた理由である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題計画当初は、幕末から明治初期の江戸語・東京語の調査を拡充し、江戸語・東京語接続詞の発達過程を対象とした分析を行う予定であったが、平成27年度から計画を一部変更し、近世前中期上方語の調査分析を最優先事項としている。また、新たに得た近代語資料を用いた分析も進める。 平成28年度に収集、分析を行った用例群に関する研究成果の発表が当該年度には行えなかったため、平成29年度は特に重点的にこの成果発表を目指す。学会発表、論文発表を予定している。具体的には新たに得た資料で分析した近代の東西逆接条件表現の実態について、また、一昨年度から計画していた上方語の前中期の資料を対象とした調査結果についての発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学内外の公務の多忙化が生じたことと、情報収集や成果発表を行う予定であった学会・研究会開催の日程が公務上の行事とが重なることが度々生じたことにより、旅費や成果発表にかかる経費の執行が予定より少なくなった。また、資料整理補助のアルバイトとして雇用できる人材が見つからなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
調査に必要な図書資料の購入、旅費に当てる。
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