生成文法理論のもとで展開される2つの主題理論(theta system approachとconstructionalist approach )を批判的に検討し、動詞の交替の可否を決定する特性を明らかにし、新たな主題理論を構築することを目的として研究を行った。 第一に前年度において、移動様態動詞と心理動詞が示す交替を研究対象として研究を進めた結果、constructionalist approachの方がより広範で、妥当な説明がなされることがわかった。 第二に前年度から今年度にかけて、心理動詞の3つの交替形を用いて、これらが動詞句削除の観点からどのような構造を持つのか検討し、3つの交替形の相違は軽動詞の種類に還元できるとこを明らかにした。この研究は、constructionalist approach を支持する更なる証拠であるとともに、動詞の交替の可否を決定する特性を明らかにする決定的な手がかりとなる点で重要な意義を持つ。 第三に今年度においては、bakeやmakeの動詞が示す受益者交替や移動様態動詞の勧誘行為交替についても、その交替形が動詞句削除の観点からどのような構造を持つのか検討し、交替形の相違が軽動詞の種類から派生できることを明らかにした。この研究は心理動詞だけではなく、受益者交替や勧誘行為交替を示す動詞についても、統一的な分析ができることを示した点で、重要な意義を持つ。この研究の成果は、雑誌Explorations in English Linguistics 29にて、"Argument Structure Alternations and Verb Phrase Ellipsis: Two Case Studies"というタイトルの論文として、また図書『言語学の現在を知る26考』にて、「勧誘行為交替の主要部移動分析」というタイトルの論文として掲載された。
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