研究課題/領域番号 |
26770169
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
菅野 悟 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (80583476)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 素性継承 / 対格言語 / 能格言語 / 受動文 / 反受動文 |
研究実績の概要 |
本研究は、素性継承の観点から言語間の違いと歴史的変化を捉えることを目的としている。平成26年度は、能格言語と対格言語を対象として、vPフェイズにおける両言語間の違いと歴史的変化に焦点を当てた。能格言語においては、従来さまざまな分析がなされ、項構造が両言語間で異なるという考えがある(Marantz 1984)。一方、項構造は両言語間で同じであるが、格付与の点に違いがあるとする考えがある(Chomsky 1995, Bobaljik 1993)。 しかし、平成26年度内の研究として、両言語は項構造の違いがあり、格付与能力はかなり類似しているという結論を出した。さらに、この構造の違いは素性継承から導かれる。対格言語においては、vPに存在する意味役割の対象素性(theme feature)が下位の主要部(V)へと素性継承されるのに対し、能格言語では、動作主素性(agent feature)が素性継承を受ける。さらに、両言語間には、双方向的な歴史的変化が存在し、この変化も素性継承の変化として説明される。能格言語は反受動文を通し、対格言語へと変化するが、反受動文においては、対象素性が継承される。一方、対格言語では、受動文を通し、能格言語へと変化をする。受動文では、動作主素性が素性継承を受ける。これら有標構文が無標となることにより変化が生じると主張した。 このように、素性継承の観点から、対格言語と能格言語の違いと歴史的変化を捉えることが出来、この成果は、「Diachronic Changes between Accusative and Ergative Languages」としてまとめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は素性継承の観点により、言語間の違いと歴史的変化を捉えることを目的としており、平成26年度においては、主にvP領域において、この研究がすすめられた。この研究は、vP領域内の研究成果であるとともに、今後の研究の基盤となる。この二点の理由により、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に行われたvPフェイズに対する研究を拡張することを試みる。そのため、今後は次の二点に焦点を当て、研究を進める。 第一に、形態的能格言語はどのような点で、対格言語、統語的能格言語と類似点、及び、相違点を有するのか。平成26年度において、対象とした能格言語は統語的能格言語であり、形態的能格言語の分析は不十分であった。形態的能格言語として、インド・アーリア語族は豊富なデータが蓄積されており、また、その中のいくつかの言語は対格言語へと変化している。このようなデータの分析をし、生成文法の理論的枠組みで理論の提出を目標とする。 第二に、vPの素性継承の観点から成された言語間の違いと歴史的変化をCP領域へと拡張することを試みる。近年、CP領域に関しては、活発な議論がなされている分野である。本研究からCP領域に対する貢献をすることを目標とする。 この二点における研究成果を提出することを今後の目的とする。
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